Lack of Oxygen and Beyond

-Smalltalk on hypoxia biology-

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#13-02 陽性クローンが取れた!!

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紆余曲折を経たスクリーニングの結果、陽性クローンが取れてきた。

しかし数がすくない!!

以前の経験から考えると格段に数が少ないわけです。かなりやばい感じがしました。しかも1:1のアッセイではそうまあまあの強さのものもあるのだがそれを除けば全然だめだというようなものも多く完全に意気消沈してしまいました。

気を取り直してとにかく陽性クローンをシークエンスすると、論文が一つだけ存在して名前のついているものとESTの中には入っているが機能やなどまったく未知のクローン(clone 518と名付けた)と二種類に分かれるーといっても陽性クローンの絶対数は絶対的にすくないのだがーことが解った。

使ったライブラリーはHA-tagが付いたものであったが、clone 518のframeがあっているかどうかはこの時点では判断がついていなかった。独立したクローンでなく同じものが数個釣れてきていただけだったからだ。とにかくHA-tagごとプラスミドを入れ替えてHEK293細胞で強制発現できるようにして次の段階に進むことになった。

誰が考えても以下の実験くらいはする必要はあった。

つまり免疫沈降、in vitroでの相互作用の検討、HIF-1の活性への影響などなどから始めると同時に、取れているクローンーHA-tagの後に都合よく開始コドンがin-frameで存在したーの実在性(対応するmRNA, 蛋白質が実在するかどうか)の検討などなど。

293細胞に過剰発現させて抗HA抗体での免疫沈降がConnor君によってまず試みられた。みごと玉砕、というか系がworkしていなかったと思う、ぼくの見るところ。

ここら辺からGLSとぼくのConnor君へのプレッシャーがきつくなりとうとうConnor君が登校拒否的な行動をとるようになってしまった。

GLSとぼくで相談して、仕方ないのでぼくも実際に実験をすることになった。

GST-tagのクローンの作成とin vitro interaction assay、reporter assayでのHIF-1活性への影響、HIF-1α transactivation活性への影響などを調べたところ想定していたような属性をclone 518が持つことが判明した。

気をよくしたConnor君は何事も無かったかのように復帰しRACEを手がけることになりぼくは抑制の機序を探るべく新たな実験に突入することになった。

ぼくは、今までしていた実験は当分お預け。

しかし、毎日毎日データが小気味よいほど出てこれほど楽しかった時期はなかったと記憶している。

実験に”失敗”することはほとんど無かった。実験手技はこの時期にはぼくにとっては黄金期にさしかかっていた。

RI切れとかたまにありその場合お昼で実験中止で気体区していたりしていた。このような事態になっても7時に出勤16時には帰り土日は休みという生活はそのままだった。

まったくよい時代でした。

<続きます>

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9月 2nd, 2009 at 10:43 pm

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#13-01 多難な船出

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GLSの研究室ですることは決めていたので早々にplasmidの回収などの仕事を始めた。

研究室は京都の麻酔科の研究室と比較しても見劣りするような設備でかなり心配したのだが,ぼくが計画したものは分子生物学の基本的な研究だったので特に苦労もなくすぐに成果が出た。

効率よく自分のペースで実験を進めたかったので朝6時には家を出るようにした。それでも半年以上を費やしたが一年後には実験はすべて終わっていた。投稿したら何も追加実験も無しに通してくれた。

これと平行してGLSに頼まれたHIF-1aの変異体の発現アデノウイルスを作る仕事を進めた。提示された方法ではうまくいかず2ヶ月ほど棒に振った。業を煮やしてBV(Dr.Bert VogensteinはJHUではこう呼ばれていた)から分けてもらったpAdEasy法を採用してからはトントン拍子に進んで無事ウイルスが完成した

ー一式を受け取りに彼のラボを訪ねてGLS研との格差にびっくり。今の京大の基礎と臨床の研究室の構造的な格差以上の格差!! ー。

組み替えを起こす大腸菌がすでに市販されていてラッキーだっただけなのだが。

加えて、アイルランドからきていたポスドクのConnor君のyeast two-hybrid systemを使ってHIF-1aの転写活性化ドメインと結合する蛋白質を単離するというプロジェクトを手伝うことなった。ぼくには京都での経験があったからだ。

Connerは典型的なヨーロッパ的な生活習慣を守っていた。研究室には10時過ぎに現れる、お昼御飯は一時間かけてとる、午後7時は帰宅する、原則土曜日・日曜日は研究室に来ない、などである。

ーそもそもGLS lab.では当時週末に働く習慣は誰も持っていなかった。それであれだけの成果が上がっていたのだから恐れ入った。長い時間labにいるだけが能でなということが理解できた。ぼくも結局土曜日・日曜日は原則研究室に行かないことにした。土日を休んでも研究はどんどん進んでいった。理由は簡単で麻酔というか臨床活動をしなかったかららだ。7時から16時まで研究するだけで9時間。京都にいたときに較べれば一日あたりの研究時間は遥かに長いわけだ。考えるとこれは退路が断たれたような状況だ。ろくな研究があがらないのは臨床をしているからだという言い訳が通用しないという状況ー

最終目的は以下のような性質を持つ蛋白質をとることであった。

つまりHIF-1aのtransactivation domainに結合して、願わくは酸素分圧依存性にHIF-1aの転写活性の調節に関わる,という性質である。

研究の背景にはGLS labから発表されていた論文がある。

この論文で同定されていたIDに結合する蛋白質を転写活性化の文脈で単離をすることが直接の目標であった。このプロジェクトが最終的には成功した理由は、転写活性のアッセイ系が曲がりなりにも確立していたということだと思う。様々な研究も何かものをいうにはしっかりした検証系の存在が必須なのであるということを学んだ。漠然としたアイデアなど研究には全く役に立たないのだ。

実験手技上の問題点はこのアッセイの原理を知るものには明らかだった。転写活性化ドメインを含む領域をbaitに使うことによるバックグラウンドの高さである。偽陽性のクローンが多数釣れてくることが予想された。ここの条件設定に手間取り立ち上がりに時間を要した

ー時間がかかったのはもちろん実験に内在する困難だけではなくタダ単にConnor君の要因もあったー

そもそもライブラリーもお金をケチってよそのラボにもらったものを使っていたし計画には当所から暗雲が立ちこめていた訳である。

実験が開始された後も酵母のインキュベータの温度が37℃のままだったりとかしてなかなかうまくいかないということが続いて前途多難な船出でだった。

GLS; Gregg L. Semenza

JHU; Johns Hopkins University

ID;inhibitory domain

<続きます>

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9月 1st, 2009 at 11:09 pm

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#11 低酸素応答のクロストークについて考えてみる

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#11 低酸素応答のクロストークについて考えてみる

前回、さまざまな低酸素応答の存在を紹介した。

低酸素応答の制御は主にイオンチャネルの活性で説明のできる頸動脈小体、肺動脈によるものであっても、感知器、実行器の素子の発現制御においては遺伝子応答による調節からは逃れることはできない。

頸動脈小体や肺動脈における低酸素は両者とも低酸素への暴露から効果部位での反応はかなり迅速(一分以内)である。このような迅速な応答においては mRNA誘導-protein合成という時間のかかる回り道は直接は関与していない。しかし、このような応答も刺激への暴露が長時間に及ぶ場合つまり慢性的な刺激への暴露が続けばフィードバック制御が働き反応の閾値や強さが変化する。このようなフィードバック制御には刺激暴露中に細胞で起こる遺伝子変化が大きく関わっている場合がある。また発生の過程では特別な遺伝子発現パターン故に酸素分圧能をある組織が獲得していく。

前回説明した頸動脈小体(carotid body;CB)、低酸素性肺血管収縮(hypoxic pulmonary vasoconstriction; HPV)における低酸素応答を例にとりこれらのフィードバック制御について低酸素誘導性因子1(hypoxia-inducible factor 1;HIF-1)との関わりを解説したい。

HIF-1aをコードするhif1a遺伝子ノックアウトマウスは胎生致死である。この性質を克服するために現在では数々のコンディショナルノックダウンモデルが開発され各臓器におけるHIF-1またはHIF-1aの働きの解析がされている。

紹介する報告は、hif1a+/-マウスを用いた解析である。

ー肺血管の緊張


hif1a+/-マウスはhif1a+/+マウスと比較して低酸素応答の強さが低いしや速さが遅くなっている。つまりマウスを10%酸素分圧下で飼育しヘマトクリットの変化を解析すると飼育前には両群でヘマトクリット値に差はなかったが一週間後からhif1a+/-マウスにおいてヘマトクリット値の上昇が有意に抑制されていることがわかった。この差は4週間までは有意であるが5週間を超えると差は認められなくなった。右室肥大の程度にも有意な差が認められてhif1a+/-マウスでは5週目までは抑制されていた。同様の差は右室圧の変化においても観察された。

組織学的な解析により肺胞に近接する肺細小動脈の肥厚の程度がhif1a+/-マウスおいては軽度であった。

pulmonary arterial smooth muscle cell (PASMC)を用いた検討では、慢性低酸素は電位依存性のカリウムチャネルKv1.5を抑制しPASMCの膜電位の上昇させカリウム電流を減少させる。またこの抑制はhif1a+/-マウス由来のPASMCでは起こらない。

このように曝露される酸素分圧誘導性の HIF-1活性に依存して肺動脈の収縮性がリセットされることがわかる。

興味深いことに肺細動脈内皮細胞における低酸素誘導性のendothelin type Aの発現誘導にはHIF-2が関わっていて少なくともhif1a+/-マウスを用いた検討ではHIF-1の関与は否定的である。

ー頚動脈体の酸素分圧感知と呼吸調節


hif1a+/-マウスとhif1a+/+マウスを用いて頸動脈小体 (CB)を介した低酸素誘導性の呼吸調節機能へのHIF-1aの影響が検討された。

100%, 21%, 12%酸素分圧への気体に暴露して5分間呼吸数、1回換気量を測定したところhif1a+/-マウスとhif1a+/+マウスで差は検出できなかった。

高吸入酸素分圧ガスへの暴露により一過性の呼吸抑制が起こりCBを含む化学受容体の感受性を推定することができる(Dejours test)。

100%酸素ガスへの暴露後20秒間の呼吸回数の変化を検討したことhif1a+/-マウスではhif1a+/+マウスに比較して呼吸回数の減少が少ないことが判明した。つまりhif1a+/-マウスではCBの感受性が低下していることが推定できた。

さらに低酸素応答を比較してみると両側の迷走神経を切断したhif1a+/-マウスでは急性低酸素暴露による呼吸回数の増加が認められなった

これらの結果は、hif1a+/-マウスでは野生型に比較して呼吸制御においてCBへの依存の度合いが低いことを示唆している。

健常人に高濃度酸素を吸入させたときの呼吸応答に関しては以外と皆知りません。学生でも研修医でも麻酔科の専門医の資格を持っている先生でも正確には答えられないことがあります。

二相性の応答があり、まず初めに分時換気量がおちその後は換気量は上昇していきます。諸説ありますが、一応Haldane効果が延髄で起こるという解説は定説の一つです。身体全体で見れば酸素消費量も減るし、通常脳血流も減るというのが生理学の教科書的には定説です。酸素は与えればいいというものではありません。

次に、慢性低酸素環境への暴露後の急性低酸素への暴露における呼吸応答が検討された。野生型では、慢性低酸素環境での飼育後(0.4気圧で3日間)、12%酸素分圧への暴露時の呼吸数の増加の度合いが増加数するのに対して、hif1a+/-型では、増加の度合いが減少するという結果が得られた。

さらにCBを摘出して12%低酸素に暴露してcaroid sinus nerveの活動を電気生理学的に検討したところhif1a+/-マウスでは、低酸素誘導性の神経活動がほぼ消失していた。

このようにHIF-1は遺伝子が部分的に欠損するのみでCBの低酸素応答性は大きな影響を受ける。興味深いことにファミリー分子HIF-2はこの欠損を代償できない。

さらに低酸素誘導性の炎症反応にCBの酸素感知の閾値が影響されるという報告も存在する。炎症性サイトカインによるHIF-1活性化がこの経路に関わっている可能性は大いにある。

CBにおける低酸素感知には”低酸素センサー”からのシグナルが様々な種類のカリウムチャネルに流れ膜電位の調節に関わっていると報告されている。酸素、NADPHからheme oxygenase 2(HO-2)で生成されるCO(carbon monooxide)が BK channelを抑制するという機序でCBの低酸素感知が行われているという説が提唱されている。実際、HO-2欠損マウスでは低酸素誘導性の換気応答が減弱しているという報告も存在する。このような現象とHIFの関連は現在不明である。

以上のように、低酸素センサーーイオンチャネルを介して実行されていると考えられている低酸素応答でも低酸素依存的な遺伝子応答の制御下にある。

クロスフィードバック制御.tiff

参考文献

1. Shimoda LA, Manalo DJ, Sham JS, Semenza GL, Sylvester JT. Partial HIF-1alpha deficiency impairs pulmonary arterial myocyte electrophysiological responses to hypoxia. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. 2001 Jul;281(1):L202-8.

2. Yu AY, Shimoda LA, Iyer NV, Huso DL, Sun X, McWilliams R, et al. Impaired physiological responses to chronic hypoxia in mice partially deficient for hypoxia-inducible factor 1alpha. J Clin Invest. 1999 Mar;103(5):691-6.

3. Hoshi T, Lahiri S. Cell biology. Oxygen sensing: it’s a gas! Science. 2004 Dec 17;306(5704):2050-1.

4. Williams SE, Wootton P, Mason HS, Bould J, Iles DE, Riccardi D, et al. Hemoxygenase-2 is an oxygen sensor for a calcium-sensitive potassium channel. Science. 2004 Dec 17;306(5704):2093-7.

5. Kline DD, Peng YJ, Manalo DJ, Semenza GL, Prabhakar NR. Defective carotid body function and impaired ventilatory responses to chronic hypoxia in mice partially deficient for hypoxia-inducible factor 1 alpha. Proc Natl Acad Sci U S A. 2002 Jan 22;99(2):821-6.

6.   Powell FL. Adaptation to chronic hypoxia involves immune cell invasion and increased expression of inflammatory cytokines in rat carotid body. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. 2009 Feb;296(2):L156-7.
明日は多分周術期使用薬剤の影響について書きます。

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8月 10th, 2009 at 10:47 pm

#10 低酸素センシング機構-さまざまな意匠

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#10 低酸素センシング機構-さまざまな意匠

#4-様々な低酸素応答

で解説したとおりに生体の低酸素応答は、遺伝子応答の有無、迅速性、また応答を惹起する酸素分圧により様々に分類できる。

fig1.tiff

低酸素を感知するメカニズムとして、頚動脈小体(Carotid body)-舌咽神経、大動脈体(Aortic body)-迷走神経を介して動脈血酸素分圧の低下のシグナルが呼吸中枢に送られるものが教科書的に古くから知られている。

動脈血酸素分圧が60mmHgを下回ればglomus I型細胞からドーパミン、アセチルコリン、ATPなどの神経伝達物質が放出され、呼吸中枢が刺激される。酸素分圧の変化を感知する機構が存在するはずである。

酸素分圧が12.5%程度の気体の吸入をヒトが吸入すればほとんど瞬時に遅くとも15分以内に動脈血酸素分圧は50mmHg程度に低下し肺動脈圧は1.5倍程度上昇する。つまり低酸素性肺血管収縮反応(hypoxic vasoconstriction; HPV)が起こる

同じ血管でも一方で動脈管は酸素への曝露により収縮する。

また胎盤絨毛内の胎児血管は酸素分圧に感受性である。低酸素に曝露されれば収縮する。

生体の酸素センサーとして麻酔科医になじみの深いのはヘモグロビンであろう。α,βの2種類のポリペプチド鎖各々2本で構成される四量体であり、1つのヘムに酸素が結合するとタンパク質の立体構造が変化し、他のヘムに酸素が結合しやすくなるという性質を持っている(アロステリック効果!!)。酸素と直接結合するタンパク質が酸素センサーとして機能していて、酸素濃度の変化が立体構造の変化に変換され蛋白質の活性(ヘモグロビンの場合は、酸素分子との結合能であるが、酵素であれば酵素活性が)が変化する。つまり、酸素濃度の高い所では単独のヘムよりも効率的に酸素を取り入れることができる。この結果、ヘモグロビンは酸素の多い肺では酸素を吸収し、酸素分圧の低い末梢組織では酸素を放出することになる。

酸素分子がヘモグロビンに 結合する時のように、アロステリック促進はリガンドの結合が基質分子と他の結合サイトの反応性を高める現象である。ヘモグロビンの例では、酸素は基質であ ると同時にエフェクターとして、効率的に働いている。アロステリックサイトは、隣のサブユニットの結合部位である。一つのサブユニットに酸素が結合する と、構造が変化し、残りの結合部位の酸素親和性を高める。

細胞中のミオグロビンのそれぞれのヘムにはヘモグロビンのような協同効果は無いので、酸素との結合生成反応は酸素濃度に一次で比例するだけである。

解離曲線は極度に左方移動しており筋肉においては酸素の貯蔵庫としての役割を果たしている。

このようにヘム蛋白質は細胞内の酸素分圧感知機構において酸素分圧センサーの候補として有力な分子であるのであるが、様々な実験事実はある種のヘム蛋白質がHVP、carodid bodyまた低酸素誘導性の遺伝子発現おいて酸素センサーとして働いていると言う証拠はない。

様々な実験結果によれば現在低酸素センサーの実態と考えられているのは、元コンドリアのcomplex III, NADPH oxidase superfamily, hemooxygenase IIと云う事になる。

これらのセンサー候補は酸素分圧感知の閾値がそれぞれ異なりその意味で様々な低酸素応答における酸素分圧の閾値に対応している。

HPVにおける酸素センサーの実体、CBにおける酸素センサーの実体についてはいまだに論争に決着がついていないどころか一見まったく正反対の学説が並立してる。

参考文献

1. Adachi T, Ishikawa K, Hida W, Matsumoto H, Masuda T, Date F, et al. Hypoxemia and blunted hypoxic ventilatory responses in mice lacking heme oxygenase-2. Biochem Biophys Res Commun. 2004 Jul 23;320(2):514-22.

2. Guzy RD, Hoyos B, Robin E, Chen H, Liu L, Mansfield KD, et al. Mitochondrial complex III is required for hypoxia-induced ROS production and cellular oxygen sensing. Cell Metab. 2005 Jun;1(6):401-8.

3. Guzy RD, Mack MM, Schumacker PT. Mitochondrial complex III is required for hypoxia-induced ROS production and gene transcription in yeast. Antioxid Redox Signal. 2007 Sep;9(9):1317-28.

4. Guzy RD, Schumacker PT. Oxygen sensing by mitochondria at complex III: the paradox of increased reactive oxygen species during hypoxia. Exp Physiol. 2006 Sep;91(5):807-19.

5. Lahiri S, Roy A, Baby SM, Hoshi T, Semenza GL, Prabhakar NR. Oxygen sensing in the body. Prog Biophys Mol Biol. 2006 Jul;91(3):249-86.

6. Mansfield KD, Guzy RD, Pan Y, Young RM, Cash TP, Schumacker PT, et al. Mitochondrial dysfunction resulting from loss of cytochrome c impairs cellular oxygen sensing and hypoxic HIF-alpha activation. Cell Metab. 2005 Jun;1(6):393-9.

7. Moudgil R, Michelakis ED, Archer SL. Hypoxic pulmonary vasoconstriction. J Appl Physiol. 2005 Jan;98(1):390-403.

8. Prabhakar NR. O2 sensing at the mammalian carotid body: why multiple O2 sensors and multiple transmitters? Exp Physiol. 2006 Jan;91(1):17-23.

9. Prabhakar NR, Peng YJ, Yuan G, Kumar GK. Reactive oxygen species facilitate oxygen sensing. Novartis Found Symp. 2006;272:95-9; discussion 100-5, 31-40.

10. Williams SE, Wootton P, Mason HS, Bould J, Iles DE, Riccardi D, et al. Hemoxygenase-2 is an oxygen sensor for a calcium-sensitive potassium channel. Science. 2004 Dec 17;306(5704):2093-7.

11.広田 喜一, 田中 具治. 低酸素応答と低酸素センサー. Life Support and Anesthesia. 2008;15(3):238-43.

12.広田 喜一. 細胞の低酸素応答機構-低酸素センサーを巡る論争. 実験医学. 2007;25:2120-6.

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8月 4th, 2009 at 11:49 pm

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#9 hypoxia-inducible factor 1, 低酸素誘導性因子1

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#9 hypoxia-inducible factor 1,低酸素誘導性因子1

wikipediaに解説が掲載されている。

英語版(参照)、日本語版(参照)ともに記述は古典的な知見とその解釈を知るためには有用かも知れない。

英語版には遺伝子に関する情報が掲載されていて便利である。

しかし、明確な誤りも存在するので注意が必要である。

誘導性因子という名前は、培養細胞酸素分圧に逆相関してHIF-1α蛋白質の発現量が増加することに由来する。

この細胞内蛋白質蓄積はHIF-1αのmRNAが低酸素環境下で誘導を受けたというよりはHIF-1α 蛋白質のmRNAからの新生、蛋白質の破壊のバランスで決定されているということが培養細胞を用いた検討により1993年には判明していた。(cDNA cloingより先に!!)

GL Wang and GL Semenza

Characterization of hypoxia-inducible factor 1 and regulation of DNA binding activity by hypoxia

J. Biol. Chem., Oct 1993; 268: 21513 – 21518

Guang L. Wang and Gregg L. Semenza

Purification and Characterization of Hypoxia-inducible Factor 1

J. Biol. Chem., Jan 1995; 270: 1230 – 1237 ; doi:10.1074/jbc.270.3.1230

この論文は必読である。

このような古典的な手法を使いある種の力業でHIF-1のcDNA単離に成功したのである。Semenza氏が「自分は熱心なポスドクに恵まれた、labの成否はいかに優秀なポスドクを獲得できるかで決まるのだ」と聞かされたことがある。

1-5-20%.jpg

Hep3B細胞を用いたWestern blot

HIF-1α は機能的にわけられるいくつかのドメインで構成されている。

N側(ヒトではアミノ酸配列の1-501番くらいまで)のDNA結合 (bHLH domain)、HIF-1β (Per-ARNT-Sim (PAS) domain )との二量体形成に関わる。

C側(アミノ酸531-826番まで)は、主に転写活性化に関わる機能を担っている。この大きなドメインは二つの転写活性化ドメインを含みその間にはID(inhibitory domain)と名付けられた介在配列が存在する。

HIF-1ab.tiff

bc3279469006.jpeg

Bing-Hua Jiang, Jenny Z. Zheng, Sandra W. Leung, Rick Roe, and Gregg L. Semenza

Transactivation and Inhibitory Domains of Hypoxia-inducible Factor 1. MODULATION OF TRANSCRIPTIONAL ACTIVITY BY OXYGEN TENSION

J. Biol. Chem., Aug 1997; 272: 19253 – 19260 ; doi:10.1074/jbc.272.31.19253より引用

Bing-Hua Jiang, Elizabeth Rue, Guang L. Wang, Rick Roe, and Gregg L. Semenza

Dimerization, DNA Binding, and Transactivation Properties of Hypoxia-inducible Factor 1

J. Biol. Chem., Jul 1996; 271: 17771 – 17778 ; doi:10.1074/jbc.271.30.17771参照のこと

HIF-1βは、aryl hydrocarbon receptor (AhR)とヘテロ二量体を形成するaryl hydrocarbon receptor nuclear translocatorとして知られていた蛋白質であった。HIF-1のcDNA単離により ARNTは HIF-1α とも二量体を形成し AhRとは別の遺伝子上の配列(hypoxia-response element; HRE)を認識する転写因子を構成することがわかった。つまりHIF-1のβ subunitはダイオキシン受容体を構成する分子である。

このように、研究の初期段階では細胞内でのHIF-1αの蛋白質発現量の調整がHIF-1活性調節における”要”と考えられていてこの調節の分子機構の解明へむけての研究が先行していた。

一方Semenza氏らは、HIF-1αの転写活性化能調節の重要性にいち早く着目していて、HIF-1αの転写活性化能調節は細胞内蛋白質発現量調節とは独立に酸素分圧で調整されている可能性を指摘した。この論文で示された実験事実を説明する因子として後に私たちが単離に成功したのがFIH-1である。

この時代にIDを機能的なドメインとして定立したSemenza氏はやはり慧眼の持ち主としかいいようがない。FIH-1の単離はこのドメインの存在の仮定故に成った。

Bing-Hua Jiang, Jenny Z. Zheng, Sandra W. Leung, Rick Roe, and Gregg L. Semenza

Transactivation and Inhibitory Domains of Hypoxia-inducible Factor 1. MODULATION OF TRANSCRIPTIONAL ACTIVITY BY OXYGEN TENSION

J. Biol. Chem., Aug 1997; 272: 19253 – 19260 ; doi:10.1074/jbc.272.31.19253

まとめると

HIF-1はアルファサブユニット(HIF-1α)とベータサブユニット(HIF-1β)からなる二両体であり二つのペプチドが疎水結合で結びつき一つの機能的な蛋白質を構成している。この内、低酸素応答性を司っているのはHIF-1α であることが分かっている。 HIF-1αは要約すると以下のような性質を持っている。

  • 20%酸素下での培養状態では細胞内のHIF-1α の蛋白質の発現量は非常に低く抑えられているが酸素分圧の低下に反応して5%以下の培養条件で急激に蛋白質の発現量が増加する。

  • 蛋白質量の変化とは独立して転写因子としての活性(転写活性化能)が酸素分圧の低下に伴い上昇する。

  • 活性化したHIF-1は発現制御域(HRE)に結合し標的遺伝子の発現を促す。

HIF-1のこれらの性質を分子生物学的に理解することから低酸素感知機構の研究がスタートした。

しかし逆説的にHIF-1の活性化は低酸素条件下でのみ起こるわけでなくさまざまなHIF-1活性化因子が生体内、合成化合物を問わず発見されている。

HIF-1には近縁分子が存在する。現在存在が判明しているHIF-2, HIF-3はHIF-1とは別の遺伝子に由来してHIF familyを形作っている。

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5月 14th, 2009 at 10:00 pm

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#8-HIF-1の活性化と低酸素センシング機構-歴史編

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#8-HIF-1の活性化と低酸素センシング機構-歴史編

hypoxia-inducible factor 1(HIF-1)は、erythropoietinの発現調節に関わる転写因子として単離された。

cDNA単離に続き、血管内皮由来因子(VEGF),glucose transporte I(GLUT1)などを含む低酸素誘導性遺伝子の発現誘導にもHIF-1が必須ともいえるほどの大きな役割を果たしていることが明らかになってきた。1998年に発表されたHIF-1a欠損細胞を用いた研究でHIF-1が低酸素誘導性遺伝子応答に果たす役割の大きさが改めて示された。

F2.large.jpg.jpeg

Genes Dev. 1998 12: pp149-162より引用

HIF-1は低酸素誘導性解糖系酵素の発現の調節因子である+/+, -/-はhif-1aのゲノタイプを示す。

次の大きな課題は低酸素がいかにHIF-1を活性化するか、その分子機序の解明となった。

つまり酸素センサーの同定である。

初期から様々な仮説が提出された。

大腸菌の膜蛋白質にFixLと名付けられた膜蛋白質が存在し、ヘム蛋白の一種であり酸素の結合により立体構造の変化が誘導され蛋白質の機能の変化にいたるという酸素分圧感知機構が知られていた。

FixL.jpg

HIF-1の場合、制御サブユニットHIF-1aはヘム蛋白質でもないし、鉄結合蛋白質でもないことが示されていたが、細胞質内のこのような蛋白質が酸素センサーとして機能することで低酸素の感知が行われているという仮説があった。

sense1.jpg

Perspectives on Oxygen Sensing Cell 98 pp. 281 – 284より引用

もう一方の仮説は酸素分圧の変化が細胞内の活性酸素腫(reactive oxygen species; ROS)の産生量の変化に変換されてHIF-1に伝わるというものであった。

senese2.jpg

Perspectives on Oxygen Sensing Cell 98 pp. 281 – 284より引用

またHIF-1活性化に関わる酸素分圧感知機構の解明とは独立にcarotid bodyでの酸素分圧感知機構、血管緊張の酸素分圧による調節に関わるイオンチャネルの酸素分圧による調節機構の研究が進んでいた。

いくつかの酸素分圧感受性のカリウムチャネルが同定されている。

しかし、これらのカリウムチャネルの酸素分圧による調節は、HIF-1aの酸素分圧による調節と用量ー反応曲線などもまったく異なり別の分子機序で担われていることも明らかになっていた。

10f3.jpeg

10f2.jpeg

N Engl J Med (2005) 353:p2042より引用

いくつかのpotassium-channelは酸素分圧感受性を持つ。

低酸素センサーの同定は2001年にセントラルドグマが提出されるまでHIF-1研究最大の課題であり続けた。

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5月 13th, 2009 at 11:25 pm

#7 酸素の流れ

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#7 酸素の流れ

HIF-1について考える前に生体内の酸素の流れを考えてみます。

培養細胞を用いた研究がどれくらい生体での低酸素応答と対応しているかを考える基礎となると思います。

培養細胞を用いた”低酸素”では、従来、20%酸素、5%二酸化炭素、75%窒素の混合ガスで満たされたインキュベーターの環境を”常酸素 (normixia)”条件、一方例えば1%酸素、5%二酸化炭素、94%窒素の環境を”低酸素 (hypoxia)”条件として実験を進める。

Western blotはある培養細胞を用いた実験結果である。

20%酸素下では検出限界以下の発現量しかないHIF-1aが5%,1%環境の酸素分圧が減少するに従って明確に検出できるようになってくる。

1-5-20%.jpg

酸素のフローを見てみよう。

肺胞の分圧は110 mmHg程度であり動脈血中では約100 mmHg程度となっていて,毛細血管を離れ、間質中では40-20 mmHg (5%)となり細胞内の酸素分圧は最終的には20-10 mmHg(一気圧下では、2.7-1.3%程度)となっている。一般に「酸素の滝」といわれるカスケードである。

組織間質の酸素分圧が培養環境の酸素分圧と相同であると仮定すれば、生体はおおざっぱには5%程度の酸素分圧環境にさらされていて。様々な環境変化により1%程度の”低酸素”に暴露される可能性があるといえる。

人が空気を吸入している場合肺胞で理想的なガス交換が行われても動脈血の酸素分圧は一気圧下では100mmHg強にしかなり得ないので血管内皮細胞でさえ酸素分圧150mmHgの環境に触れることはない。

ブタを使った腸管の酸素分圧を酸素電極を用いて測定した結果を以下に示した。100%酸素を吸入して動脈血の酸素分圧が454mmHgとなっていたとしても小腸粘膜の酸素分圧は52mmHg程度にしかならない。

組織分圧.jpg

(Ratnaraj, J. et al Anesth Analg 2004;99:p207)

こういった研究は臓器や腫瘍の酸素分圧を考える基礎的な資料となると思う。臓器、組織の酸素分圧はさまざまな因子で複雑に調節されていることが判明している。

腫瘍への血流もxenograftの様にendogenousな血管の関与がほとんど無視できるまたは期待できないものから臓器本来への血流調節を一部受けているようなものまで多様であり一概に論じることはおそらくできない。

酸素分圧-活性.jpg

低酸素性のHIF-1の調節における酸素-HIF-1の用量ー反応曲線である。

5%O2分圧に点線が引いてあるがこれは厳密には閾値ではない。しかし、現象的には閾値として見える。

特別な状況下ーepigeneticallyに発現が厳密に抑制されているなど(こんなことあるのでしょうか? 誰か調べてみてください)ーを除きHIF-1の活性化はある。

つまり細胞では程度の差はあるにせよHIF-1の活性化はあるのであるが、検出系がWestern blotならWestern blot、reporter assayならresorter assayで感度の差があるだけだとぼくは考えています。

ミトコンドリアの電子伝達系での最終電子受容体として機能して、酸化的リン酸化によるATP産生を促します。

肺胞からミトコンドリアまでの酸素の流れのどこかに障害が生じれば酸素不足つまり低酸素が起こることになります。

エネルギー産生を酸化的リン酸化に大きく依存している細胞例えばニューロンなどは酸素供給が絶たれると容易に機能不全を経て不可逆的な細胞死に陥る一方、アストロサイトはグルコースの供給さえ確実なら解糖によりATPの産生が可能で、このように同じ脳の中であってもすべての細胞にとって酸素は同じ重要度を持つわけではないこともわかっています。

このような事を確認の上で次のステップに進みましょう。

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5月 12th, 2009 at 10:00 pm

#6-hypoxia-inducible factor 1またはhighly involved factor

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#6-hypoxia-inducible factor 1またはhighly involved factor

米国ボルチモア市のJohns Hopkins 大学の小児科医Gregg L. Semenza博士は、1980年代の後半にエリスロポエチンの低酸素誘導性の発現誘導に関わる細胞内の因子の単離を決意しかなりオーソドックスな分子生物学的手法を用いて1995年にcDNAの単離に成功した。hypoxia-inducible factor 1(HIF-1; 低酸素誘導性因子 1)である。ーとにかく何でも番号をつけるのが彼の趣味である。HIF-1, FIH-1など)

semenza.jpg

Semenza氏は、小児科の医者である。少なくとも10年前にはbeeperを持っていたしレジデントが研究室で彼に怒られていた。米国の研究室には医学部志望のテクニシャンがたくさん働いている。何でMDが基礎研究をするのか理解できないと考える人もいるようである。ぼくも何で?という質問をされた。答えるかわりにあんたのボスに質問してみたら?と振ったところ本当に質問した。子供の病気の多くは子供に責任が無くそのような無垢な子供に奉仕したいという気持ちで小児科を選んだと答えていました。

少し前に会ったときには臨床やめたと話していました。お前もやめたらとも云われました。

HIF-1は転写因子である。ゲノムワイドな研究によればすくなくとも6000個以上(ヒトの遺伝子は現在では25000個程度しかないと推定されている)の遺伝子の発現がHIF-1によって支配されていることが判明している。

支配遺伝子.jpg

HIF-1はhelix-loop-helix(HLH)とPer-ARNT-SIM(PAS)ドメインを持つアルファサブユニット(HIF-1α)とベータサブユニット(HIF-1β)が疎水結合で結びつき一つの機能的な蛋白質を構成している転写因子であり、活性化したHIF-1は細胞核に移動し標的遺伝子の発現制御域(hypoxia response element; HRE, 5′-RCGTG-3′ (R=A or G))に結合し発現を促す。

活性の制御に関わるサブユニットはHIF-1αであって、培養細胞を用いた検討から要約すると以下のような性質を持っている。

  1. 20%酸素下での培養状態では細胞内のHIF-1α蛋白質の発現量は非常に低く抑えられているが酸素分圧の低下に反応して5%以下の培養条件で急激に蛋白質の発現量が増加する。
  2. タンパク質の変化とは独立して転写因子としての活性(転写活性化能)が酸素分圧の低下に伴い上昇する。
  3. 活性化したHIF-1は細胞核に移行して発現制御域に結合し標的遺伝子の発現を促す。

HIF-1のこれらの性質を分子生物学的に理解することから低酸素感知機構の研究がスタートした。

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5月 8th, 2009 at 8:34 pm

#5-低酸素誘発性の遺伝子発現変化と転写因子

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#5-低酸素誘発性の遺伝子発現変化と転写因子

遺伝子発現、蛋白質新生をともなう低酸素応答は時間や日の単位で表現型が明らかになってくる。このような低酸素応答においては細胞内の遺伝子発現の制御を司る転写因子の役割が大きい。

このような低酸素環境下に細胞が置かれたときに活性化することが報告されている転写因子はいくつか存在する。

hypoxia-inducible factor 1(HIF-1), NF-kB, AP-1, Egr-1, ATF4, NF-IL6などである。

最終的に細胞への酸素の供給過程は単純な拡散で行われるが、解剖学的に複雑に構成されている高等多細胞生物はすべての細胞が必要十分な酸素化を実現できるように特化した生理学的な仕組みを備えている。呼吸器は、酸素が赤血球中のヘモグロビンに移行するための場を提供する肺、横隔膜、その他の呼吸補助筋や酸素分圧を感知する神経上皮細胞などで構成されている。循環器は、酸素運搬媒体である赤血球、運搬エンジンである心臓、運搬路である血管で構成される。システムの適切な発達と維持のためにはおらく数千の遺伝子の調和のとれた発現が必要である。

低酸素ネットワーク.jpg

たとえばヒト臍帯由来血管内皮細胞を1%酸素分圧に曝露した時にそのmRNAの発現が有意に変化する遺伝子は3767個存在し、1.5倍以上増加する遺伝子は845個存在し、減少する遺伝子は1072個存在するという報告がある。(Blood. 2005,vol.105:p659-69.)。これらの変化を単一の転写因子で説明することはできないが、HIF-1は845個のうち245個の、1072個のうちの325個の発現変化に関わる転写因子であると報告されている。

hif-gene.jpg

HUVECを使った研究

HIF-1が低酸素誘発性の遺伝子変化において大きな役割を果たしていることがわかる

AdCA5とは持続活性化型のHIF-1aである。

(Blood. 2005,vol.105:p659-69.)

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5月 7th, 2009 at 11:04 pm

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#4-様々な低酸素応答

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4-様々な低酸素応答

生体にはさまざまな低酸素応答が存在する。

頚動脈小体-舌咽神経、大動脈体-迷走神経を介して動脈血酸素分圧の低下のシグナルが呼吸中枢に送られるものが教科書的には知られている。動脈血酸素分圧が60 mmHgを下回れば、頚動脈小体のglomus I型細胞からドーパミン、アセチルコリン、ATPなどの神経伝達物質が放出され、呼吸中枢が刺激される。

酸素分圧が12.5%程度の気体の吸入をヒトが吸入すれば遅くとも15分以内に動脈血酸素分圧は50 mmHg程度に低下し肺動脈圧は1.5倍程度上昇する。つまり低酸素性肺血管収縮反応(hypoxic vasoconstriction; HPV)が起こる。このようなシステムは、血液中の酸素分圧の変化を感知し主に呼吸数、換気血流比の調節を含む呼吸システムの調節に関わっている。

ヒト肺動脈内皮細胞を分離し、20%酸素条件(95%air/5% CO2)下と1%酸素条件下(1%O2, 5%CO2, 95%N2)で24時間培養した後にRNAを細胞より抽出しDNAマイクロアレイを用いて22,283個のプローブを用いた発現解析を行ったところ有意に発現が上昇したものが845個、有意に発現が抑制されたものが1072個あったという報告がある。

またヘモグロビンは分子レベルでの低酸素応答の好例である。ヘモグロビンは、α,βの2種類のポリペプチド鎖各々2本で構成される四量体であり、1つのヘムに酸素が結合するとタンパク質の立体構造が変化し、他のヘムにも酸素が結合しやすくなるという性質を持っている(アロステリック効果!!)。酸素と直接結合するタンパク質が酸素センサーと機能していて、酸素濃度の変化が立体構造の変化に変換され蛋白質の活性(ヘモグロビンの場合は、酸素分子との結合能であるが、酵素であれば酵素活性が)が変化する。

このような様々な低酸素応答を分類してみる。

時間の視点からは

  • 急性応答

  • 亜急性応答

  • 慢性応答

という分類が可能である。


  • 個体レベル

  • 臓器レベル

  • 細胞レベル

のような分類も可能である。”3-低酸素”で解説した”低酸素”は個体レベル、臓器レベルでの低酸素に力点を置いている。

馴化、トレーニングは個体レベルの応答であるし、呼吸応答、肺血管の収縮などは臓器レベルの応答といえる。

また別の観点からは

  • 遺伝子応答を伴うもの

  • 遺伝子応答とは直接関連のないもの

とも分類できる。

さらに

  • 酸素分圧の変化がどのような機序でセンスされているかで分類もできる

このように低酸素応答にも様々なものが存在のであるが、まず遺伝子応答を伴う低酸素誘導性の遺伝子応答に焦点を絞って低酸素応答について以下考えていく。

低酸素応答のいろいろ.jpg

生体の低酸素応答は、遺伝子応答の有無、迅速性、また応答を惹起する酸素分圧により様々に分類できる。

このような多様な低酸素応答にはそれぞれに対応する酸素分圧感知機構が存在すると考えられる。

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5月 5th, 2009 at 7:39 am

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