Lack of Oxygen and Beyond

-Smalltalk on hypoxia biology-

Archive for the ‘周術期’ tag

#12.周術期使用薬剤のHIF-1活性化への影響

without comments

12.周術期使用薬剤のHIF-1活性化への影響

学会も近づいてきたので手術室やICUで使う薬剤がHIF-1の活性または活性化にどんな影響を及ぼすかについて考えてみます。

ーこのような検討の意味ついて

手術室、集中治療室は患者を巡る酸素環境がもっともダイナミックに変化する場所です。このような広い意味での集中治療を受けている患者は同時に様々な薬剤の投与を受けている。これらの薬剤は生体の酸素分圧変化に対する応答に何らかの影響を与えているかどうかを検討して、また影響があるのであれば、それを考慮に入れなければ患者の低酸素応答を理解することができません。

また最近動物実験などでは実験のために動物への麻酔をする必要があり、リアルタイムイメージングなどでは動物の不動を麻酔薬の投与で得る場合も存在します。麻酔薬が低酸素応答を直接修飾するようなことがあればイメージングの精度に関わる問題となるはずです。

このような理由で周術期使用薬剤のHIF-1を介した低酸素応答への影響を検討することには意味がある、と考えています。

ー検討の方法

いままでの報告では

培養細胞を用いた検討マウス・ラットのなどの実験小動物を用いた検討の報告がある。

培養細胞を用いれば薬剤の濃度の管理も容易であるが生体内での応答とは異なるものをみている可能性は否定できない。

吸入麻酔を用いた検討では動物を用いた場合濃度の管理は逆に容易であるが、臓器をそのまま取り出してアッセイしても臓器はさまざまな種類の細胞によって構成されているので解釈が曖昧になる可能性もある。例えば脳は神経細胞とグリア細胞で構成されているが低酸素応答も両者で異なるし薬剤への応答も同じであるという保証はない。これらの検討には組織染色などの何らかのイメージングの手法が必要なのかもしれない。

ー結果

周術期使用薬剤のHIF-1の活性、活性化に与える影響をまとめたものが以下の表である。ほとんどは培養細胞を用いた実験結果の報告である。

    HIF-1活性

常酸素分圧

低酸素分圧

出典

揮発性麻酔薬

ハロセン

[1]

イソフルレン

()

[2]

静脈麻酔薬

プロポフォール

[3] [4]

チオペンタール

[5]

ミダゾラム

未発表

ケタミン

未発表

亜硝酸製剤

ニトログリセリン

[6]

イソソルビド

ニトロプルシド

カルシウムブロッカー

ニカルジピン

[7]

シルニジピン

ワソラン

ジルチアゼム

局所麻酔薬

リドカイン

[8]

ブピバカイン

このほかガス状分子一酸化窒素、一酸化炭素に関する報告も存在する。

一酸化窒素 (nitric oxide; NO)の場合事情はそう簡単ではない。様々な NO donorが存在し細胞との組み合わせで HIF-1の活性化にいたるもの、活性化抑制にいたる組みあわせが存在するし、調節のモードも報告で一様でない。

私たちは数種類の NO donor (NOC, GSNO)が培養細胞 HEP3B, HEK293細胞で、HIF-1amRNAからの蛋白質新生効率を高めることによりHIF-1aの蛋白質の細胞内蓄積が促進されまた HIF-1aの転写活性化ドメインのリン酸化を促進することで転写活性可能の亢進ももたらすことを報告した[9]。別の報告では、NOがミトコンドリアでの酸素消費を抑制することにより細胞内の酸素環境に変化(細胞内酸素分圧の上昇)をもたらし結果としてHIF-1aの蛋白質の安定化が阻害されHIF-1の活性化を抑制するという。さらにNOにより蛋白質の S-nitrosylationが起こりHIF-1活性化にいたる低酸素感知機構が阻害されることにより低酸素誘導性のHIF-1活性化が阻害されると主張する報告も存在する[10]。またSNPは一般にはNO donorと考えられているが私たちの検討では NO releaseに非依存的にHIF-1の活性を阻害する。

一酸化炭素 (carbon monoxide;CO)は、HIF-1の活性化を抑制するという報告がある一方で[11]COHIF-1の活性化を通じて虚血再灌流障害を軽減すという報告も存在する[12]

このようにガスを用いた実験では結果が一見まったく正反対の報告が並立している場合があり解釈に注意を要する。

ー今後の課題

臓器保護の観点から周術期使用薬剤のHIF-1活性化に与える影響は追求されていくと思います。

組織、細胞特異性などは追求されていくと思います。

参考文献

1. Itoh T, Hirota K, Hisano T, Namba T, Fukuda K. The Volatile anesthetics halothane and isoflurane differentially modulate pro-inflammatory cytokines-induced p38 mitogen-activated protein kinase activation. J Anesth. 2004;18:203-9.

2. Li QF, Wang XR, Yang YW, Su DS. Up-regulation of hypoxia inducible factor 1alpha by isoflurane in Hep3B cells. Anesthesiology. 2006;105:1211-9.

3. Takabuchi S, Hirota K, Nishi K, Oda S, Oda T, Shingu T, Takabayashi A, Adachi T, Semenza GL, Fukuda K. The intravenous anesthetic propofol inhibits hypoxia-inducible factor 1 activity in an oxygen tension-dependent manner. FEBS Lett. 2004;577:434-8.

4. Tanaka T, Takabuchi S, Nishi K, Oda S, Wakamatsu T, Daijo H, Fukuda K, Hirota K. The intravenous anesthetic propofol inhibits lipopolysaccharide-induced hypoxia-inducible factor 1 activation and suppresses the glucose metabolism in macrophages. J Anesth. In press.

5. Wakamatsu T, Tanaka T, Oda S, Nishi K, Harada H, Daijo H, Takabuchi S, Kai S, Fukuda K, Hirota K. The intravenous anesthetics barbiturates inhibit hypoxia-inducible factor 1 activation. Eur J Pharmacol. In press.

6. Takabuchi S, Hirota K, Nishi K, Oda S, Oda T, Shingu T, Takabayashi A, Adachi T, Semenza GL, Fukuda K. The inhibitory effect of sodium nitroprusside on HIF-1 activation is not dependent on nitric oxide- soluble guanylyl cyclase pathway. Biochem Biophys Res Commun. 2004;324:417-23.

7. Oda S, Oda T, Takabuchi S, Nishi K, Wakamatsu T, Tanaka T, Adachi T, Fukuda K, Nohara R, Hirota K. The calcium channel blocker cilnidipine selectively suppresses hypoxia-inducible factor 1 activity in vascular cells. Eur J Pharmacol. 2009;606:130-6.

8. Nishi K, Hirota K, Takabuchi S, Oda S, Fukuda K, Adachi T, Shingu K. The effect of local anesthetics on the cellular hypoxia-induced gene responses mediated by hypoxia-inducible factor 1. J Anesth. 2005;19:54-9.

9. Kasuno K, Takabuchi S, Fukuda K, Kizaka-Kondoh S, Yodoi J, Adachi T, Semenza GL, Hirota K. Nitric oxide induces hypoxia-inducible factor 1 activation that is dependent on MAP kinase and phosphatidylinositol 3-kinase signaling. J Biol Chem. 2004;279:2550-8.

10. Palmer LA, Gaston B, Johns RA. Normoxic stabilization of hypoxia-inducible factor-1 expression and activity: redox-dependent effect of nitrogen oxides. Mol Pharmacol. 2000;58:1197-203.

11. Liu Y, Christou H, Morita T, Laughner E, Semenza GL, Kourembanas S. Carbon monoxide and nitric oxide suppress the hypoxic induction of vascular endothelial growth factor gene via the 5′ enhancer. J Biol Chem. 1998;273:15257-62.

12. Chin BY, Jiang G, Wegiel B, Wang HJ, Macdonald T, Zhang XC, Gallo D, Cszimadia E, Bach FH, Lee PJ, Otterbein LE. Hypoxia-inducible factor 1alpha stabilization by carbon monoxide results in cytoprotective preconditioning. Proc Natl Acad Sci U S A. 2007;104:5109-14.

13. 広田 喜一, 田中 具治. 低酸素応答と低酸素センサー. Life Support and Anesthesia. 2008;15:238-43.

Written by bodyhacker

8月 11th, 2009 at 10:43 pm

Posted in clinical

Tagged with , ,

madeonamac.gif Creative Commons License