Lack of Oxygen and Beyond

-Smalltalk on hypoxia biology-

Archive for the ‘HIF-1’ tag

#13-02 陽性クローンが取れた!!

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紆余曲折を経たスクリーニングの結果、陽性クローンが取れてきた。

しかし数がすくない!!

以前の経験から考えると格段に数が少ないわけです。かなりやばい感じがしました。しかも1:1のアッセイではそうまあまあの強さのものもあるのだがそれを除けば全然だめだというようなものも多く完全に意気消沈してしまいました。

気を取り直してとにかく陽性クローンをシークエンスすると、論文が一つだけ存在して名前のついているものとESTの中には入っているが機能やなどまったく未知のクローン(clone 518と名付けた)と二種類に分かれるーといっても陽性クローンの絶対数は絶対的にすくないのだがーことが解った。

使ったライブラリーはHA-tagが付いたものであったが、clone 518のframeがあっているかどうかはこの時点では判断がついていなかった。独立したクローンでなく同じものが数個釣れてきていただけだったからだ。とにかくHA-tagごとプラスミドを入れ替えてHEK293細胞で強制発現できるようにして次の段階に進むことになった。

誰が考えても以下の実験くらいはする必要はあった。

つまり免疫沈降、in vitroでの相互作用の検討、HIF-1の活性への影響などなどから始めると同時に、取れているクローンーHA-tagの後に都合よく開始コドンがin-frameで存在したーの実在性(対応するmRNA, 蛋白質が実在するかどうか)の検討などなど。

293細胞に過剰発現させて抗HA抗体での免疫沈降がConnor君によってまず試みられた。みごと玉砕、というか系がworkしていなかったと思う、ぼくの見るところ。

ここら辺からGLSとぼくのConnor君へのプレッシャーがきつくなりとうとうConnor君が登校拒否的な行動をとるようになってしまった。

GLSとぼくで相談して、仕方ないのでぼくも実際に実験をすることになった。

GST-tagのクローンの作成とin vitro interaction assay、reporter assayでのHIF-1活性への影響、HIF-1α transactivation活性への影響などを調べたところ想定していたような属性をclone 518が持つことが判明した。

気をよくしたConnor君は何事も無かったかのように復帰しRACEを手がけることになりぼくは抑制の機序を探るべく新たな実験に突入することになった。

ぼくは、今までしていた実験は当分お預け。

しかし、毎日毎日データが小気味よいほど出てこれほど楽しかった時期はなかったと記憶している。

実験に”失敗”することはほとんど無かった。実験手技はこの時期にはぼくにとっては黄金期にさしかかっていた。

RI切れとかたまにありその場合お昼で実験中止で気体区していたりしていた。このような事態になっても7時に出勤16時には帰り土日は休みという生活はそのままだった。

まったくよい時代でした。

<続きます>

Written by bodyhacker

9月 2nd, 2009 at 10:43 pm

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#12.周術期使用薬剤のHIF-1活性化への影響

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12.周術期使用薬剤のHIF-1活性化への影響

学会も近づいてきたので手術室やICUで使う薬剤がHIF-1の活性または活性化にどんな影響を及ぼすかについて考えてみます。

ーこのような検討の意味ついて

手術室、集中治療室は患者を巡る酸素環境がもっともダイナミックに変化する場所です。このような広い意味での集中治療を受けている患者は同時に様々な薬剤の投与を受けている。これらの薬剤は生体の酸素分圧変化に対する応答に何らかの影響を与えているかどうかを検討して、また影響があるのであれば、それを考慮に入れなければ患者の低酸素応答を理解することができません。

また最近動物実験などでは実験のために動物への麻酔をする必要があり、リアルタイムイメージングなどでは動物の不動を麻酔薬の投与で得る場合も存在します。麻酔薬が低酸素応答を直接修飾するようなことがあればイメージングの精度に関わる問題となるはずです。

このような理由で周術期使用薬剤のHIF-1を介した低酸素応答への影響を検討することには意味がある、と考えています。

ー検討の方法

いままでの報告では

培養細胞を用いた検討マウス・ラットのなどの実験小動物を用いた検討の報告がある。

培養細胞を用いれば薬剤の濃度の管理も容易であるが生体内での応答とは異なるものをみている可能性は否定できない。

吸入麻酔を用いた検討では動物を用いた場合濃度の管理は逆に容易であるが、臓器をそのまま取り出してアッセイしても臓器はさまざまな種類の細胞によって構成されているので解釈が曖昧になる可能性もある。例えば脳は神経細胞とグリア細胞で構成されているが低酸素応答も両者で異なるし薬剤への応答も同じであるという保証はない。これらの検討には組織染色などの何らかのイメージングの手法が必要なのかもしれない。

ー結果

周術期使用薬剤のHIF-1の活性、活性化に与える影響をまとめたものが以下の表である。ほとんどは培養細胞を用いた実験結果の報告である。

    HIF-1活性

常酸素分圧

低酸素分圧

出典

揮発性麻酔薬

ハロセン

[1]

イソフルレン

()

[2]

静脈麻酔薬

プロポフォール

[3] [4]

チオペンタール

[5]

ミダゾラム

未発表

ケタミン

未発表

亜硝酸製剤

ニトログリセリン

[6]

イソソルビド

ニトロプルシド

カルシウムブロッカー

ニカルジピン

[7]

シルニジピン

ワソラン

ジルチアゼム

局所麻酔薬

リドカイン

[8]

ブピバカイン

このほかガス状分子一酸化窒素、一酸化炭素に関する報告も存在する。

一酸化窒素 (nitric oxide; NO)の場合事情はそう簡単ではない。様々な NO donorが存在し細胞との組み合わせで HIF-1の活性化にいたるもの、活性化抑制にいたる組みあわせが存在するし、調節のモードも報告で一様でない。

私たちは数種類の NO donor (NOC, GSNO)が培養細胞 HEP3B, HEK293細胞で、HIF-1amRNAからの蛋白質新生効率を高めることによりHIF-1aの蛋白質の細胞内蓄積が促進されまた HIF-1aの転写活性化ドメインのリン酸化を促進することで転写活性可能の亢進ももたらすことを報告した[9]。別の報告では、NOがミトコンドリアでの酸素消費を抑制することにより細胞内の酸素環境に変化(細胞内酸素分圧の上昇)をもたらし結果としてHIF-1aの蛋白質の安定化が阻害されHIF-1の活性化を抑制するという。さらにNOにより蛋白質の S-nitrosylationが起こりHIF-1活性化にいたる低酸素感知機構が阻害されることにより低酸素誘導性のHIF-1活性化が阻害されると主張する報告も存在する[10]。またSNPは一般にはNO donorと考えられているが私たちの検討では NO releaseに非依存的にHIF-1の活性を阻害する。

一酸化炭素 (carbon monoxide;CO)は、HIF-1の活性化を抑制するという報告がある一方で[11]COHIF-1の活性化を通じて虚血再灌流障害を軽減すという報告も存在する[12]

このようにガスを用いた実験では結果が一見まったく正反対の報告が並立している場合があり解釈に注意を要する。

ー今後の課題

臓器保護の観点から周術期使用薬剤のHIF-1活性化に与える影響は追求されていくと思います。

組織、細胞特異性などは追求されていくと思います。

参考文献

1. Itoh T, Hirota K, Hisano T, Namba T, Fukuda K. The Volatile anesthetics halothane and isoflurane differentially modulate pro-inflammatory cytokines-induced p38 mitogen-activated protein kinase activation. J Anesth. 2004;18:203-9.

2. Li QF, Wang XR, Yang YW, Su DS. Up-regulation of hypoxia inducible factor 1alpha by isoflurane in Hep3B cells. Anesthesiology. 2006;105:1211-9.

3. Takabuchi S, Hirota K, Nishi K, Oda S, Oda T, Shingu T, Takabayashi A, Adachi T, Semenza GL, Fukuda K. The intravenous anesthetic propofol inhibits hypoxia-inducible factor 1 activity in an oxygen tension-dependent manner. FEBS Lett. 2004;577:434-8.

4. Tanaka T, Takabuchi S, Nishi K, Oda S, Wakamatsu T, Daijo H, Fukuda K, Hirota K. The intravenous anesthetic propofol inhibits lipopolysaccharide-induced hypoxia-inducible factor 1 activation and suppresses the glucose metabolism in macrophages. J Anesth. In press.

5. Wakamatsu T, Tanaka T, Oda S, Nishi K, Harada H, Daijo H, Takabuchi S, Kai S, Fukuda K, Hirota K. The intravenous anesthetics barbiturates inhibit hypoxia-inducible factor 1 activation. Eur J Pharmacol. In press.

6. Takabuchi S, Hirota K, Nishi K, Oda S, Oda T, Shingu T, Takabayashi A, Adachi T, Semenza GL, Fukuda K. The inhibitory effect of sodium nitroprusside on HIF-1 activation is not dependent on nitric oxide- soluble guanylyl cyclase pathway. Biochem Biophys Res Commun. 2004;324:417-23.

7. Oda S, Oda T, Takabuchi S, Nishi K, Wakamatsu T, Tanaka T, Adachi T, Fukuda K, Nohara R, Hirota K. The calcium channel blocker cilnidipine selectively suppresses hypoxia-inducible factor 1 activity in vascular cells. Eur J Pharmacol. 2009;606:130-6.

8. Nishi K, Hirota K, Takabuchi S, Oda S, Fukuda K, Adachi T, Shingu K. The effect of local anesthetics on the cellular hypoxia-induced gene responses mediated by hypoxia-inducible factor 1. J Anesth. 2005;19:54-9.

9. Kasuno K, Takabuchi S, Fukuda K, Kizaka-Kondoh S, Yodoi J, Adachi T, Semenza GL, Hirota K. Nitric oxide induces hypoxia-inducible factor 1 activation that is dependent on MAP kinase and phosphatidylinositol 3-kinase signaling. J Biol Chem. 2004;279:2550-8.

10. Palmer LA, Gaston B, Johns RA. Normoxic stabilization of hypoxia-inducible factor-1 expression and activity: redox-dependent effect of nitrogen oxides. Mol Pharmacol. 2000;58:1197-203.

11. Liu Y, Christou H, Morita T, Laughner E, Semenza GL, Kourembanas S. Carbon monoxide and nitric oxide suppress the hypoxic induction of vascular endothelial growth factor gene via the 5′ enhancer. J Biol Chem. 1998;273:15257-62.

12. Chin BY, Jiang G, Wegiel B, Wang HJ, Macdonald T, Zhang XC, Gallo D, Cszimadia E, Bach FH, Lee PJ, Otterbein LE. Hypoxia-inducible factor 1alpha stabilization by carbon monoxide results in cytoprotective preconditioning. Proc Natl Acad Sci U S A. 2007;104:5109-14.

13. 広田 喜一, 田中 具治. 低酸素応答と低酸素センサー. Life Support and Anesthesia. 2008;15:238-43.

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8月 11th, 2009 at 10:43 pm

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#11 低酸素応答のクロストークについて考えてみる

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#11 低酸素応答のクロストークについて考えてみる

前回、さまざまな低酸素応答の存在を紹介した。

低酸素応答の制御は主にイオンチャネルの活性で説明のできる頸動脈小体、肺動脈によるものであっても、感知器、実行器の素子の発現制御においては遺伝子応答による調節からは逃れることはできない。

頸動脈小体や肺動脈における低酸素は両者とも低酸素への暴露から効果部位での反応はかなり迅速(一分以内)である。このような迅速な応答においては mRNA誘導-protein合成という時間のかかる回り道は直接は関与していない。しかし、このような応答も刺激への暴露が長時間に及ぶ場合つまり慢性的な刺激への暴露が続けばフィードバック制御が働き反応の閾値や強さが変化する。このようなフィードバック制御には刺激暴露中に細胞で起こる遺伝子変化が大きく関わっている場合がある。また発生の過程では特別な遺伝子発現パターン故に酸素分圧能をある組織が獲得していく。

前回説明した頸動脈小体(carotid body;CB)、低酸素性肺血管収縮(hypoxic pulmonary vasoconstriction; HPV)における低酸素応答を例にとりこれらのフィードバック制御について低酸素誘導性因子1(hypoxia-inducible factor 1;HIF-1)との関わりを解説したい。

HIF-1aをコードするhif1a遺伝子ノックアウトマウスは胎生致死である。この性質を克服するために現在では数々のコンディショナルノックダウンモデルが開発され各臓器におけるHIF-1またはHIF-1aの働きの解析がされている。

紹介する報告は、hif1a+/-マウスを用いた解析である。

ー肺血管の緊張


hif1a+/-マウスはhif1a+/+マウスと比較して低酸素応答の強さが低いしや速さが遅くなっている。つまりマウスを10%酸素分圧下で飼育しヘマトクリットの変化を解析すると飼育前には両群でヘマトクリット値に差はなかったが一週間後からhif1a+/-マウスにおいてヘマトクリット値の上昇が有意に抑制されていることがわかった。この差は4週間までは有意であるが5週間を超えると差は認められなくなった。右室肥大の程度にも有意な差が認められてhif1a+/-マウスでは5週目までは抑制されていた。同様の差は右室圧の変化においても観察された。

組織学的な解析により肺胞に近接する肺細小動脈の肥厚の程度がhif1a+/-マウスおいては軽度であった。

pulmonary arterial smooth muscle cell (PASMC)を用いた検討では、慢性低酸素は電位依存性のカリウムチャネルKv1.5を抑制しPASMCの膜電位の上昇させカリウム電流を減少させる。またこの抑制はhif1a+/-マウス由来のPASMCでは起こらない。

このように曝露される酸素分圧誘導性の HIF-1活性に依存して肺動脈の収縮性がリセットされることがわかる。

興味深いことに肺細動脈内皮細胞における低酸素誘導性のendothelin type Aの発現誘導にはHIF-2が関わっていて少なくともhif1a+/-マウスを用いた検討ではHIF-1の関与は否定的である。

ー頚動脈体の酸素分圧感知と呼吸調節


hif1a+/-マウスとhif1a+/+マウスを用いて頸動脈小体 (CB)を介した低酸素誘導性の呼吸調節機能へのHIF-1aの影響が検討された。

100%, 21%, 12%酸素分圧への気体に暴露して5分間呼吸数、1回換気量を測定したところhif1a+/-マウスとhif1a+/+マウスで差は検出できなかった。

高吸入酸素分圧ガスへの暴露により一過性の呼吸抑制が起こりCBを含む化学受容体の感受性を推定することができる(Dejours test)。

100%酸素ガスへの暴露後20秒間の呼吸回数の変化を検討したことhif1a+/-マウスではhif1a+/+マウスに比較して呼吸回数の減少が少ないことが判明した。つまりhif1a+/-マウスではCBの感受性が低下していることが推定できた。

さらに低酸素応答を比較してみると両側の迷走神経を切断したhif1a+/-マウスでは急性低酸素暴露による呼吸回数の増加が認められなった

これらの結果は、hif1a+/-マウスでは野生型に比較して呼吸制御においてCBへの依存の度合いが低いことを示唆している。

健常人に高濃度酸素を吸入させたときの呼吸応答に関しては以外と皆知りません。学生でも研修医でも麻酔科の専門医の資格を持っている先生でも正確には答えられないことがあります。

二相性の応答があり、まず初めに分時換気量がおちその後は換気量は上昇していきます。諸説ありますが、一応Haldane効果が延髄で起こるという解説は定説の一つです。身体全体で見れば酸素消費量も減るし、通常脳血流も減るというのが生理学の教科書的には定説です。酸素は与えればいいというものではありません。

次に、慢性低酸素環境への暴露後の急性低酸素への暴露における呼吸応答が検討された。野生型では、慢性低酸素環境での飼育後(0.4気圧で3日間)、12%酸素分圧への暴露時の呼吸数の増加の度合いが増加数するのに対して、hif1a+/-型では、増加の度合いが減少するという結果が得られた。

さらにCBを摘出して12%低酸素に暴露してcaroid sinus nerveの活動を電気生理学的に検討したところhif1a+/-マウスでは、低酸素誘導性の神経活動がほぼ消失していた。

このようにHIF-1は遺伝子が部分的に欠損するのみでCBの低酸素応答性は大きな影響を受ける。興味深いことにファミリー分子HIF-2はこの欠損を代償できない。

さらに低酸素誘導性の炎症反応にCBの酸素感知の閾値が影響されるという報告も存在する。炎症性サイトカインによるHIF-1活性化がこの経路に関わっている可能性は大いにある。

CBにおける低酸素感知には”低酸素センサー”からのシグナルが様々な種類のカリウムチャネルに流れ膜電位の調節に関わっていると報告されている。酸素、NADPHからheme oxygenase 2(HO-2)で生成されるCO(carbon monooxide)が BK channelを抑制するという機序でCBの低酸素感知が行われているという説が提唱されている。実際、HO-2欠損マウスでは低酸素誘導性の換気応答が減弱しているという報告も存在する。このような現象とHIFの関連は現在不明である。

以上のように、低酸素センサーーイオンチャネルを介して実行されていると考えられている低酸素応答でも低酸素依存的な遺伝子応答の制御下にある。

クロスフィードバック制御.tiff

参考文献

1. Shimoda LA, Manalo DJ, Sham JS, Semenza GL, Sylvester JT. Partial HIF-1alpha deficiency impairs pulmonary arterial myocyte electrophysiological responses to hypoxia. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. 2001 Jul;281(1):L202-8.

2. Yu AY, Shimoda LA, Iyer NV, Huso DL, Sun X, McWilliams R, et al. Impaired physiological responses to chronic hypoxia in mice partially deficient for hypoxia-inducible factor 1alpha. J Clin Invest. 1999 Mar;103(5):691-6.

3. Hoshi T, Lahiri S. Cell biology. Oxygen sensing: it’s a gas! Science. 2004 Dec 17;306(5704):2050-1.

4. Williams SE, Wootton P, Mason HS, Bould J, Iles DE, Riccardi D, et al. Hemoxygenase-2 is an oxygen sensor for a calcium-sensitive potassium channel. Science. 2004 Dec 17;306(5704):2093-7.

5. Kline DD, Peng YJ, Manalo DJ, Semenza GL, Prabhakar NR. Defective carotid body function and impaired ventilatory responses to chronic hypoxia in mice partially deficient for hypoxia-inducible factor 1 alpha. Proc Natl Acad Sci U S A. 2002 Jan 22;99(2):821-6.

6.   Powell FL. Adaptation to chronic hypoxia involves immune cell invasion and increased expression of inflammatory cytokines in rat carotid body. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol. 2009 Feb;296(2):L156-7.
明日は多分周術期使用薬剤の影響について書きます。

Written by bodyhacker

8月 10th, 2009 at 10:47 pm

#9 hypoxia-inducible factor 1, 低酸素誘導性因子1

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#9 hypoxia-inducible factor 1,低酸素誘導性因子1

wikipediaに解説が掲載されている。

英語版(参照)、日本語版(参照)ともに記述は古典的な知見とその解釈を知るためには有用かも知れない。

英語版には遺伝子に関する情報が掲載されていて便利である。

しかし、明確な誤りも存在するので注意が必要である。

誘導性因子という名前は、培養細胞酸素分圧に逆相関してHIF-1α蛋白質の発現量が増加することに由来する。

この細胞内蛋白質蓄積はHIF-1αのmRNAが低酸素環境下で誘導を受けたというよりはHIF-1α 蛋白質のmRNAからの新生、蛋白質の破壊のバランスで決定されているということが培養細胞を用いた検討により1993年には判明していた。(cDNA cloingより先に!!)

GL Wang and GL Semenza

Characterization of hypoxia-inducible factor 1 and regulation of DNA binding activity by hypoxia

J. Biol. Chem., Oct 1993; 268: 21513 – 21518

Guang L. Wang and Gregg L. Semenza

Purification and Characterization of Hypoxia-inducible Factor 1

J. Biol. Chem., Jan 1995; 270: 1230 – 1237 ; doi:10.1074/jbc.270.3.1230

この論文は必読である。

このような古典的な手法を使いある種の力業でHIF-1のcDNA単離に成功したのである。Semenza氏が「自分は熱心なポスドクに恵まれた、labの成否はいかに優秀なポスドクを獲得できるかで決まるのだ」と聞かされたことがある。

1-5-20%.jpg

Hep3B細胞を用いたWestern blot

HIF-1α は機能的にわけられるいくつかのドメインで構成されている。

N側(ヒトではアミノ酸配列の1-501番くらいまで)のDNA結合 (bHLH domain)、HIF-1β (Per-ARNT-Sim (PAS) domain )との二量体形成に関わる。

C側(アミノ酸531-826番まで)は、主に転写活性化に関わる機能を担っている。この大きなドメインは二つの転写活性化ドメインを含みその間にはID(inhibitory domain)と名付けられた介在配列が存在する。

HIF-1ab.tiff

bc3279469006.jpeg

Bing-Hua Jiang, Jenny Z. Zheng, Sandra W. Leung, Rick Roe, and Gregg L. Semenza

Transactivation and Inhibitory Domains of Hypoxia-inducible Factor 1. MODULATION OF TRANSCRIPTIONAL ACTIVITY BY OXYGEN TENSION

J. Biol. Chem., Aug 1997; 272: 19253 – 19260 ; doi:10.1074/jbc.272.31.19253より引用

Bing-Hua Jiang, Elizabeth Rue, Guang L. Wang, Rick Roe, and Gregg L. Semenza

Dimerization, DNA Binding, and Transactivation Properties of Hypoxia-inducible Factor 1

J. Biol. Chem., Jul 1996; 271: 17771 – 17778 ; doi:10.1074/jbc.271.30.17771参照のこと

HIF-1βは、aryl hydrocarbon receptor (AhR)とヘテロ二量体を形成するaryl hydrocarbon receptor nuclear translocatorとして知られていた蛋白質であった。HIF-1のcDNA単離により ARNTは HIF-1α とも二量体を形成し AhRとは別の遺伝子上の配列(hypoxia-response element; HRE)を認識する転写因子を構成することがわかった。つまりHIF-1のβ subunitはダイオキシン受容体を構成する分子である。

このように、研究の初期段階では細胞内でのHIF-1αの蛋白質発現量の調整がHIF-1活性調節における”要”と考えられていてこの調節の分子機構の解明へむけての研究が先行していた。

一方Semenza氏らは、HIF-1αの転写活性化能調節の重要性にいち早く着目していて、HIF-1αの転写活性化能調節は細胞内蛋白質発現量調節とは独立に酸素分圧で調整されている可能性を指摘した。この論文で示された実験事実を説明する因子として後に私たちが単離に成功したのがFIH-1である。

この時代にIDを機能的なドメインとして定立したSemenza氏はやはり慧眼の持ち主としかいいようがない。FIH-1の単離はこのドメインの存在の仮定故に成った。

Bing-Hua Jiang, Jenny Z. Zheng, Sandra W. Leung, Rick Roe, and Gregg L. Semenza

Transactivation and Inhibitory Domains of Hypoxia-inducible Factor 1. MODULATION OF TRANSCRIPTIONAL ACTIVITY BY OXYGEN TENSION

J. Biol. Chem., Aug 1997; 272: 19253 – 19260 ; doi:10.1074/jbc.272.31.19253

まとめると

HIF-1はアルファサブユニット(HIF-1α)とベータサブユニット(HIF-1β)からなる二両体であり二つのペプチドが疎水結合で結びつき一つの機能的な蛋白質を構成している。この内、低酸素応答性を司っているのはHIF-1α であることが分かっている。 HIF-1αは要約すると以下のような性質を持っている。

  • 20%酸素下での培養状態では細胞内のHIF-1α の蛋白質の発現量は非常に低く抑えられているが酸素分圧の低下に反応して5%以下の培養条件で急激に蛋白質の発現量が増加する。

  • 蛋白質量の変化とは独立して転写因子としての活性(転写活性化能)が酸素分圧の低下に伴い上昇する。

  • 活性化したHIF-1は発現制御域(HRE)に結合し標的遺伝子の発現を促す。

HIF-1のこれらの性質を分子生物学的に理解することから低酸素感知機構の研究がスタートした。

しかし逆説的にHIF-1の活性化は低酸素条件下でのみ起こるわけでなくさまざまなHIF-1活性化因子が生体内、合成化合物を問わず発見されている。

HIF-1には近縁分子が存在する。現在存在が判明しているHIF-2, HIF-3はHIF-1とは別の遺伝子に由来してHIF familyを形作っている。

Written by bodyhacker

5月 14th, 2009 at 10:00 pm

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#8-HIF-1の活性化と低酸素センシング機構-歴史編

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#8-HIF-1の活性化と低酸素センシング機構-歴史編

hypoxia-inducible factor 1(HIF-1)は、erythropoietinの発現調節に関わる転写因子として単離された。

cDNA単離に続き、血管内皮由来因子(VEGF),glucose transporte I(GLUT1)などを含む低酸素誘導性遺伝子の発現誘導にもHIF-1が必須ともいえるほどの大きな役割を果たしていることが明らかになってきた。1998年に発表されたHIF-1a欠損細胞を用いた研究でHIF-1が低酸素誘導性遺伝子応答に果たす役割の大きさが改めて示された。

F2.large.jpg.jpeg

Genes Dev. 1998 12: pp149-162より引用

HIF-1は低酸素誘導性解糖系酵素の発現の調節因子である+/+, -/-はhif-1aのゲノタイプを示す。

次の大きな課題は低酸素がいかにHIF-1を活性化するか、その分子機序の解明となった。

つまり酸素センサーの同定である。

初期から様々な仮説が提出された。

大腸菌の膜蛋白質にFixLと名付けられた膜蛋白質が存在し、ヘム蛋白の一種であり酸素の結合により立体構造の変化が誘導され蛋白質の機能の変化にいたるという酸素分圧感知機構が知られていた。

FixL.jpg

HIF-1の場合、制御サブユニットHIF-1aはヘム蛋白質でもないし、鉄結合蛋白質でもないことが示されていたが、細胞質内のこのような蛋白質が酸素センサーとして機能することで低酸素の感知が行われているという仮説があった。

sense1.jpg

Perspectives on Oxygen Sensing Cell 98 pp. 281 – 284より引用

もう一方の仮説は酸素分圧の変化が細胞内の活性酸素腫(reactive oxygen species; ROS)の産生量の変化に変換されてHIF-1に伝わるというものであった。

senese2.jpg

Perspectives on Oxygen Sensing Cell 98 pp. 281 – 284より引用

またHIF-1活性化に関わる酸素分圧感知機構の解明とは独立にcarotid bodyでの酸素分圧感知機構、血管緊張の酸素分圧による調節に関わるイオンチャネルの酸素分圧による調節機構の研究が進んでいた。

いくつかの酸素分圧感受性のカリウムチャネルが同定されている。

しかし、これらのカリウムチャネルの酸素分圧による調節は、HIF-1aの酸素分圧による調節と用量ー反応曲線などもまったく異なり別の分子機序で担われていることも明らかになっていた。

10f3.jpeg

10f2.jpeg

N Engl J Med (2005) 353:p2042より引用

いくつかのpotassium-channelは酸素分圧感受性を持つ。

低酸素センサーの同定は2001年にセントラルドグマが提出されるまでHIF-1研究最大の課題であり続けた。

Written by bodyhacker

5月 13th, 2009 at 11:25 pm

#7 酸素の流れ

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#7 酸素の流れ

HIF-1について考える前に生体内の酸素の流れを考えてみます。

培養細胞を用いた研究がどれくらい生体での低酸素応答と対応しているかを考える基礎となると思います。

培養細胞を用いた”低酸素”では、従来、20%酸素、5%二酸化炭素、75%窒素の混合ガスで満たされたインキュベーターの環境を”常酸素 (normixia)”条件、一方例えば1%酸素、5%二酸化炭素、94%窒素の環境を”低酸素 (hypoxia)”条件として実験を進める。

Western blotはある培養細胞を用いた実験結果である。

20%酸素下では検出限界以下の発現量しかないHIF-1aが5%,1%環境の酸素分圧が減少するに従って明確に検出できるようになってくる。

1-5-20%.jpg

酸素のフローを見てみよう。

肺胞の分圧は110 mmHg程度であり動脈血中では約100 mmHg程度となっていて,毛細血管を離れ、間質中では40-20 mmHg (5%)となり細胞内の酸素分圧は最終的には20-10 mmHg(一気圧下では、2.7-1.3%程度)となっている。一般に「酸素の滝」といわれるカスケードである。

組織間質の酸素分圧が培養環境の酸素分圧と相同であると仮定すれば、生体はおおざっぱには5%程度の酸素分圧環境にさらされていて。様々な環境変化により1%程度の”低酸素”に暴露される可能性があるといえる。

人が空気を吸入している場合肺胞で理想的なガス交換が行われても動脈血の酸素分圧は一気圧下では100mmHg強にしかなり得ないので血管内皮細胞でさえ酸素分圧150mmHgの環境に触れることはない。

ブタを使った腸管の酸素分圧を酸素電極を用いて測定した結果を以下に示した。100%酸素を吸入して動脈血の酸素分圧が454mmHgとなっていたとしても小腸粘膜の酸素分圧は52mmHg程度にしかならない。

組織分圧.jpg

(Ratnaraj, J. et al Anesth Analg 2004;99:p207)

こういった研究は臓器や腫瘍の酸素分圧を考える基礎的な資料となると思う。臓器、組織の酸素分圧はさまざまな因子で複雑に調節されていることが判明している。

腫瘍への血流もxenograftの様にendogenousな血管の関与がほとんど無視できるまたは期待できないものから臓器本来への血流調節を一部受けているようなものまで多様であり一概に論じることはおそらくできない。

酸素分圧-活性.jpg

低酸素性のHIF-1の調節における酸素-HIF-1の用量ー反応曲線である。

5%O2分圧に点線が引いてあるがこれは厳密には閾値ではない。しかし、現象的には閾値として見える。

特別な状況下ーepigeneticallyに発現が厳密に抑制されているなど(こんなことあるのでしょうか? 誰か調べてみてください)ーを除きHIF-1の活性化はある。

つまり細胞では程度の差はあるにせよHIF-1の活性化はあるのであるが、検出系がWestern blotならWestern blot、reporter assayならresorter assayで感度の差があるだけだとぼくは考えています。

ミトコンドリアの電子伝達系での最終電子受容体として機能して、酸化的リン酸化によるATP産生を促します。

肺胞からミトコンドリアまでの酸素の流れのどこかに障害が生じれば酸素不足つまり低酸素が起こることになります。

エネルギー産生を酸化的リン酸化に大きく依存している細胞例えばニューロンなどは酸素供給が絶たれると容易に機能不全を経て不可逆的な細胞死に陥る一方、アストロサイトはグルコースの供給さえ確実なら解糖によりATPの産生が可能で、このように同じ脳の中であってもすべての細胞にとって酸素は同じ重要度を持つわけではないこともわかっています。

このような事を確認の上で次のステップに進みましょう。

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5月 12th, 2009 at 10:00 pm

#6-hypoxia-inducible factor 1またはhighly involved factor

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#6-hypoxia-inducible factor 1またはhighly involved factor

米国ボルチモア市のJohns Hopkins 大学の小児科医Gregg L. Semenza博士は、1980年代の後半にエリスロポエチンの低酸素誘導性の発現誘導に関わる細胞内の因子の単離を決意しかなりオーソドックスな分子生物学的手法を用いて1995年にcDNAの単離に成功した。hypoxia-inducible factor 1(HIF-1; 低酸素誘導性因子 1)である。ーとにかく何でも番号をつけるのが彼の趣味である。HIF-1, FIH-1など)

semenza.jpg

Semenza氏は、小児科の医者である。少なくとも10年前にはbeeperを持っていたしレジデントが研究室で彼に怒られていた。米国の研究室には医学部志望のテクニシャンがたくさん働いている。何でMDが基礎研究をするのか理解できないと考える人もいるようである。ぼくも何で?という質問をされた。答えるかわりにあんたのボスに質問してみたら?と振ったところ本当に質問した。子供の病気の多くは子供に責任が無くそのような無垢な子供に奉仕したいという気持ちで小児科を選んだと答えていました。

少し前に会ったときには臨床やめたと話していました。お前もやめたらとも云われました。

HIF-1は転写因子である。ゲノムワイドな研究によればすくなくとも6000個以上(ヒトの遺伝子は現在では25000個程度しかないと推定されている)の遺伝子の発現がHIF-1によって支配されていることが判明している。

支配遺伝子.jpg

HIF-1はhelix-loop-helix(HLH)とPer-ARNT-SIM(PAS)ドメインを持つアルファサブユニット(HIF-1α)とベータサブユニット(HIF-1β)が疎水結合で結びつき一つの機能的な蛋白質を構成している転写因子であり、活性化したHIF-1は細胞核に移動し標的遺伝子の発現制御域(hypoxia response element; HRE, 5′-RCGTG-3′ (R=A or G))に結合し発現を促す。

活性の制御に関わるサブユニットはHIF-1αであって、培養細胞を用いた検討から要約すると以下のような性質を持っている。

  1. 20%酸素下での培養状態では細胞内のHIF-1α蛋白質の発現量は非常に低く抑えられているが酸素分圧の低下に反応して5%以下の培養条件で急激に蛋白質の発現量が増加する。
  2. タンパク質の変化とは独立して転写因子としての活性(転写活性化能)が酸素分圧の低下に伴い上昇する。
  3. 活性化したHIF-1は細胞核に移行して発現制御域に結合し標的遺伝子の発現を促す。

HIF-1のこれらの性質を分子生物学的に理解することから低酸素感知機構の研究がスタートした。

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5月 8th, 2009 at 8:34 pm

#5-低酸素誘発性の遺伝子発現変化と転写因子

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#5-低酸素誘発性の遺伝子発現変化と転写因子

遺伝子発現、蛋白質新生をともなう低酸素応答は時間や日の単位で表現型が明らかになってくる。このような低酸素応答においては細胞内の遺伝子発現の制御を司る転写因子の役割が大きい。

このような低酸素環境下に細胞が置かれたときに活性化することが報告されている転写因子はいくつか存在する。

hypoxia-inducible factor 1(HIF-1), NF-kB, AP-1, Egr-1, ATF4, NF-IL6などである。

最終的に細胞への酸素の供給過程は単純な拡散で行われるが、解剖学的に複雑に構成されている高等多細胞生物はすべての細胞が必要十分な酸素化を実現できるように特化した生理学的な仕組みを備えている。呼吸器は、酸素が赤血球中のヘモグロビンに移行するための場を提供する肺、横隔膜、その他の呼吸補助筋や酸素分圧を感知する神経上皮細胞などで構成されている。循環器は、酸素運搬媒体である赤血球、運搬エンジンである心臓、運搬路である血管で構成される。システムの適切な発達と維持のためにはおらく数千の遺伝子の調和のとれた発現が必要である。

低酸素ネットワーク.jpg

たとえばヒト臍帯由来血管内皮細胞を1%酸素分圧に曝露した時にそのmRNAの発現が有意に変化する遺伝子は3767個存在し、1.5倍以上増加する遺伝子は845個存在し、減少する遺伝子は1072個存在するという報告がある。(Blood. 2005,vol.105:p659-69.)。これらの変化を単一の転写因子で説明することはできないが、HIF-1は845個のうち245個の、1072個のうちの325個の発現変化に関わる転写因子であると報告されている。

hif-gene.jpg

HUVECを使った研究

HIF-1が低酸素誘発性の遺伝子変化において大きな役割を果たしていることがわかる

AdCA5とは持続活性化型のHIF-1aである。

(Blood. 2005,vol.105:p659-69.)

Written by bodyhacker

5月 7th, 2009 at 11:04 pm

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