小林秀雄の実質的なデビュー評論は「様々なる意匠」です。
当時の日本文学に存在した「様々な意匠」をおちょくりながら,文芸評論家としての自らの立ち位置を既存の明らかにしたものです。むちゃくちゃ力が入っていて少し難解というかその当時の文壇の事情を知らないぼくには理解が出来ない部分もありますが,何十回も読み返してそのたびに考えることがあります。
初期にはXへの手紙・私小説論 (新潮文庫)で読んできましたが現在は小林秀雄全作品〈1〉様々なる意匠で読んでいます。
文芸評論にくらべたら科学評論は難解かもしれないが単純のように思えますが,個々の論文の評価をリアルタイムにすることはそう単純ではありません。「様々なる意匠」は一回は読んでみる価値のある評論だと思います。
今調べてみると過去にもほとんど同じ事を書いていましたね。ボケがはじまっているようです。

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患者さんの麻酔後診察をします。
日帰りで帰宅した患者さんは電話インタビューをします。一泊それ以上の入院をする患者さんについては病棟を廻るということになります。平日は看護師さんにお任せしますが土曜日・休日には医者が廻ることになりぼくが担当することもあります。合い部屋の患者さんに根掘り葉掘り聞くのは控えているのですが個室の患者さんとはいろんな事を30分くらい話すこともあります。
ご自分の疾患について質問を受けることもあります。主治医でも無いので適当に答えるしかありません。医療体制への批判とか患者さんのアイデアとかの他に過去に受けた手術・麻酔との比較を話してくれる患者さんもいます。
質問項目は30個くらいあるのですが,必ずお聞きするのは「思ったより楽だったのかしんどかったのか」と云うことです。ほとんどの方は思ったより楽だったとお答えになるわけです。これで満足するわけです。
皆さんが気にすることの一つは「点滴を失敗された」とか「点滴のあとがい痛い」です。重大な事なんですね。必ず一回で確保するように皆で心がけています。デイ・サージャリー診療部では24Gの留置針を使う場合も多いです。輸液するというより麻酔薬,抗生物質の投与ルートなので細くとも何の問題もないことがほとんどだからです。
最近,ぼくらの病院ではテルモ社のある留置針が導入されました。手術室は除いた病棟で採用となったのですがデイ・サージャリー診療部の手術室は病棟と同じものをつかっているので9月から導入されました。
これがなかなか優れものなのです。どうよいのかは使って見れば明らかです。ぼくら麻酔科医に取っては大きな事でも無いような気もしていたのですが使って見るとこれが便利で最近はこの留置針を使わないと調子が狂うまでになりました。
大学院に入学するときに今は亡くなった恩師に「あんた自分の研究がすぐに患者の役に立つだのとかゆめゆめ思いなさんな」と云われました。役に立つとかそういった観点で行う研究には碌なものが無いというのです。もちろん例外はあります。ピロリ菌により胃疾患への関与など研究が直接のきっかけとなり医療を変えたものもあります。iPS細胞のような例もあります。
先生の主張は,医療というものは,別に研究室の研究などによらずとも日々現場で進化していると云うことでした。組織的に行われる場合もあるでしょうし,個人的な学びなどから現場での医療は進化すると云うことです。留置針の進化というのはぼくにはその好例に思えます。学生の臨床実習でも留置針の進化を例に挙げてこの恩師の考えは披露しています。

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NHKのテレビ番組に「新日本風土記」というのがあり毎回録画して観ています。少し前に「遠野」を題材とした番組が放送されました。
普通のおばさんが,廃校後で「見た」女の子のために毎日朝ご飯を用意しているんですとこともなげに話しているのです。
まさに,小林秀雄が信ずることと知ることとか感想で語っている世界が現代の日本にもあるのですね。うれしくなってしまいました。

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医学と仮説――原因と結果の科学を考える (岩波科学ライブラリー)
これ多分タメになりますよ。

医学と仮説――原因と結果の科学を考える (岩波科学ライブラリー)

小林秀雄全作品〈1〉様々なる意匠
Xへの手紙・私小説論 (新潮文庫)

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