土曜日の朝からさっきまで24時間日当直でした。
はじめの7時間くらい普通に働いていてその後は特に麻酔業務には携わる必要はありませんでした。
研究室で院生と論文の書き方について少し話し合ったので備忘録として書いてみました。 以下は完全に最初から最後までぼくがコントロールをして論文の作業をする場合の工程です。
ここ数年はこのやり方でやっています。
論文を書く-ぼくの方法
何かを思いついて実験をしてある程度データが蓄積したということを前提としたものです。 どのようにしてテーマを探すのかなどについてぼくなどがアドバイスできることはありません。某臨床系学会でも「論文の書き方・指導の仕方」についてのありがたい講義があったようです。
道具
Mac
始めて買ったコンピュータがSE-30で以来Macしか使っていません。現在はiMacの数年前のものと二世代前のMacbook Air 11inchを使っています。以下に説明したアプリは両方のmacにインストールしてありますので基本的にどこで作業しても論文の執筆に関してはおなじ環境が使えます。 プロジェクトを思いついて最終的に論文になるまでの全てのファイルはDropbox内に保存しておきます。全ての実験結果や作業過程を保存しますので最終的に一つのfull paperの場合1GB程度のスペースを使うことになります
アプリ
- OmniOutliner
- OmniGraffe professional
- Papers
- Scrivener
- Pages
- MS Word
- Endnote
- Adobe Illustrator
-
Prism
などを使っています。アプリ間の連携の「型」ができあがっているので今のところこれを変えるつもりはありません。この際「無料」だとかそいうったことは無関係です。
辞書
普通の英和中辞典クラスの辞書に加えて以下の二冊は必携だと思います。初心者が,辞書を参照せずに文章を書くのは無謀です。
机の横にいつも置いてあります。
webサービスの
もよく利用しています。
前準備
実験を計画した段階でいくつかのキーワードの組み合わせでPubmedを論文検索をします。Abstractをチェックして一つの論文のために100編ほどを選びます。全て”Papers”に取り込みます。 さらに絞り込んで50編くらいは通読します。その過程でさらに文献が追加されていきます。これらから実験計画を立てていきます。これらの論文はPapersからEndnoteに出力して論文を書く際の資料とします。 作業仮説,それを証明するのに必要であろう実験やその他全て思いついたことはOmnioutlinerに書き出していきます。Macでの作業が全てではなく電車の中などでは持ち歩いているMoleskineの手帳に思いついたことは書き出します。手帳に手書きしたものは後にOmniOutlinerに自分で入力し直します。最近ではiPhoneのメモ機能を利用する場合もあります。
実験 データを集める
とにかく必要なデータが集まらなければ論文を書くことはできません。
実験データの整理
そろそろ論文にまとめてもよいと思うほどデータが集まればそれを整理していきます。
得られた実験結果が作業仮説と異なっていることは大きな問題ではありません。タダの作業仮説ですから替えていけばよいのです。 余りに予想と異なる結果が再現性を伴ってでてきた場合には研究室の別の学生に追試をしてもらうこともあります。
すでに発表されている他人の論文の結果とぼくらの実験結果が異なる事は大きな問題とは考えません。どんなprestigiousな雑誌に載っているデータでもいい加減なものはいくらでもあるからです。自分たちの目の前で何度も再現できる現象を信じないことには論文など書けません。
問題なのはデータ間の整合性がとれない場合です。原因を探りますがこの段階で「筋が悪い」ということでお蔵入りになる事もあります。また自分たちの過去のデータとの整合性も重要です。
この段階が一番大きな山でこれを越えれば論文を「書く」作業に入ります。
どの雑誌に投稿するかもこの段階で決めます。またこの山を越えたprojectは雑誌をえり好みしなければ必ず論文として出版できるということがぼくの信念です。臨床の症例報告なども一緒です。症例報告などPubmedに収録されれば雑誌の種類などほとんど問題になりません。お高くとまった雑誌より気前のよいOpen Journalに掲載される方がより多くの人に読んでもらえます。
文章を作っていく
内容や英語の書き方については多くの解説書が出ています。参考にしてください。ぼくはいまだに論文の書き方の新刊が出れば眼を通します。論文を書くのは自分はヘタでまた時間がかかるので少しでも改善したいと思っているからです。
ここではテクニカルな事だけ述べようと思います。
「前準備」でつくったOmniOutlinerの項目をさらに見直し細分化していきます。大体一つのパラグラフになるように細分化されたらそのパーツ毎にScrivenerで文章を書いていきます。 気がつけば引用文献もEndnoteから貼り付けていきます。
書き上がれば出力して一つのfileに出力して以後はPagesで推敲をおこなっていきます。
もうよしという段階でPagesからMS.Wordの.doc形式で出力して共著者へはこの形式で配布します。 最後に英文校正のサービスに出して投稿です。
図はIllustratorで作りますがこれについては今回は割愛です。
まとめ
よほどの能力がないと真っ白な画面に論文を頭から書き込んでいくやり方では途中でいろんな「ほころび」・「破綻」が生じます。 作業を細分化してまた焦点を意識的にしぼりこんで作業を始めることで少なくとも他人が読んで納得できる論理的な文章になっていくと思っています。
学会の抄録程度の長さの日本語の文章であってもこの作業を毎回繰り返します。 論文の「でき」は,初心者の場合ほとんどが「英語」の問題ではありません。どれだけちゃんと考えたかの問題なのです。多くの初心者は日本語は大丈夫と思っていますが大間違いです。
昨日の議論のまとめなので今日はこれくらいです。 Markdown記法でやってみました。
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