レブン書房閉店

On 2012/7/31 火曜日, in book, books, Kindle, Net Watch in Science, Thus Spoke Dr. Hypoxia, by bodyhacker

ぼくらの大学の医学研究科には修士課程があって医師免許を持たない学生さんが大勢在籍しています。
年に一度これらの学生さんの「病院実習」という名の「病院見学」があります。
今年は28人の学生さんを手術部にお迎えました。人の話を聞いていない人もいてちょっとした修学旅行生の引率のような役回りを演じました。手術着に着替えると誰が医学科の学生と修士課程の学生の区別が全く付かなくなるので困ります。それでも研修医の先生方は明確に学生とは違って直ぐに解ります。医者になってまだ4ヶ月くらいのですが振る舞い方が手術室において違和感ないのですね。
この実習,病院内の各部署を廻っていただくのですが,担当教員を決めてその教員と一週間密着などすれば学ぶことは多いと思います。もっともそれをやり過ぎると医者をやってみたくなる学生がたくさん出て再受験予備校となる危険性はあると思います。
医者って面白い職業ですよ,単純に。

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楽天が電子書籍リーダーのkobo touchとそれを用いるサービスを開始しました。
予想通り評判は良くありません。
koboにはiPhone, iPadやMac用のアプリがありません。こんな状態では買う気になりません。KindleはiPhone, iPadやMacのどれからも読み込めて同期までできるのにね。こんなので商売しようという人の気が知れません。100万台売るつもりらしいですがたぶん無理でしょう。
Kindleのリーダーはamazon.comが提供しているサービスに関連つけられているものは持っています。
Amazon.co.jpと関連したサービスももうじき始まるようです。
リーダを買い直す必要があるのならしばらく購入はしませんがファームウェアのアップグレードで済むのであれば利用すると思います。

青空文庫の リーダーはiPhone, iPad版も公開されていてよく利用します。Macでもよく利用します。
夏目漱石,芥川龍之介, 森鴎外,太宰治,宮沢賢治などの小説から随筆までほとんどを網羅していて自由に読むことができます。
電車に乗っている時間はぼくの場合はほとんど読書時間です。かばんにあらかじめ本を入れて乗り込むこともありますが乗車時間が長い場合,書店で本を買って乗り込みます。読むものがない場合,思いだしたように青空文庫の小説を読むことがあります。例えば芥川龍之介,太宰治の小説は一つ一つが短いのでいくつもまた何度でも読み返すことができます。電子書籍の利点の一つです。
ストーリーをすでに知っている小説でも出張先,旅先などその時々ぼくが置かれた環境で新発見がそのたびにあります。このように何度も何度も読み返す文章ははすでに「本」の体裁を取っている必要がぼくにはありません。意味のあるものは内容,テキストでありどのような媒体でそれを「読んでも」まったく関係はありません。
このような読み方を電子書籍となった新刊本ですることになるかは自分でもよく解りませんが少なくとも近い将来を見越してみても「それはない」のではないかと考えています。
いわゆる「自炊」もするつもりはありません。理由は単純です。面倒だからです。
いくらでも読むべき対象はあるしわざわざ自炊してまでiPhone,iPadで自分がすでに読んだ本を再読しようとは思いません。また本としてパッケージされているものはそのものとして扱う方がぼくには合っています。PDFをiPadで読むなどまっぴらごめんです。
その意味でぼくは旧い人間です。
教科書の類いでも事情は同じです。

電車の中で麻酔の教科書を読むことはないし手術室でも教科書の類いを参照することはありません。
“Anesthesia”はweb上のExpert Consult
で購読する権利を本の購入と一緒に買いました。
テキストや図を二次利用できます。参考文献にもリンクが張ってあって便利です。
タダの教科書で英語も平易であり妙な翻訳を読む必要がありません。教科書はこのような利用ができないとPDFの形でコンピュータに入っているだけでは大きな力にならないと思います。
そもそも論文でもコンピュータの画面で読むのであれば紙ベースの雑誌に掲載されている形式のPDF版に較べてよりよい形式があるはずです。”
“Nature”などではinteractiveに論文をPC上で閲覧できるサービスをすでに提供しています。

ぼくも自分のMacで読む場合はこちらを選択します。

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以前に「新潮文庫の100冊」について書いたことがありました。(参照)
今年もキャンペーンが始まりました。
キャンペーングッズのブックカバーがほしいので何冊か買いました。

英雄の書(上)

英雄の書(下)
甲子園が割れた日―松井秀喜5連続敬遠の真実

人間の建設

の4冊です。

人間の建設」は別に持っていますがよく読み返すので京都の研究室にもおいておきたいと思って買い足しました。420円ですからタダみたいなものです。
これは小林秀雄と岡潔が1960年の8/15-送り火の日ですね-に京都で行った単なる雑談を編集して出版したものですが素晴らしく示唆的で何度読んでも新しい発見があります。
ちなみに前回紹介した「人間の進歩について」も小林秀雄と湯川秀樹の雑談のようなものです。
精神と物質―分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか (文春文庫)」は結構マジですが,「人間の建設」と「人間の進歩について」は雑談。でも10倍はおもしろいです。

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NHKが「スーパープレゼンテーション」という番組を放送しています。

TED conferenceでのpresentationのうち特に興味を引くものを選んで伊藤穣一さんの簡単な解説付きと字幕付きで放送しています。
録画してまとめて視ます。

Clay Shirky氏の
“ How cognitive surplus will change the world”(「“知力の余剰”が世界を変える」ーTEDのページでは「思考の余剰が世界を変える」となっています。-)はとても刺激的なpresetationでした。
リンクをたどれば,presentationがビデオに編集されたものを視ることができます。
まず視てみてください。

ビデオでは望めば日本語でプレゼンテーションのtranscriptを日本語で読むこともできます。
このような日本語訳も「知力の余剰」のおかげをこうむっているだと思います。
「青空文庫」も少なくともその始まりは「知力の余剰」故と言えます。

某診療科の先生方が大勢参加しているmailing listがあるのですが,問題提起があってもMLに意見を投稿するのでなく個人的なやりとりをする先生方が大勢いらっしゃるようです。残念な事です。

百万遍の「レブン書房」が閉店したと「京都大学新聞」で知りました。京大に在籍したことがある人は誰でも知っている本屋さんです。
(京都大学新聞は大学が発行しているのではなく京都大学新聞社が発行している月刊新聞です。頼んだ覚えはありませんが病院の各部署に配られてきます。twitterもやっていますID:@kyotounivpressです。)
寂しい限りです。新潟から上洛してはじめに入った書店が「レブン書房」でした。京都にいても近衛通りの北に行くことはほとんど無いのでノーマークでした。
東一条の交差点の「春琴堂書店」はどうなるのでしょうか。(参照) 心配になってきました。
生協が「ルネ」であこぎな商売を始めたときも生き残った「レブン書房」「春琴堂書店」が消えていくのは…

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そこには土曜日は1時くらいまで研究室で過ごして梅田に出て丸善-ジュンク堂で本を受け取り-この本屋無い本は無いような印象があります-立ち読みして腹が減ったのでラーメンを食べ終わって時計を見たら4時を回っていました。

雑誌「文藝」で綿矢りささんの特集をしていてそれを読んでいたのです。デビュー10周年と言うことでした。

今年も新潮文庫の100冊やっていますね。

今年のラインアップではさっき数えたら8割5分は既読でした。それでも例のパンダのキーホルダーが欲しくて二冊買って見ました。

さよなら渓谷 (新潮文庫)

狐笛のかなた (新潮文庫)です。

二冊とも予想以上に面白かったです。

特に「さよなら渓谷」は素晴らしい小説ですね。解説も触れられていましたが、映画ミスティック・リバー – Wikipedia
を彷彿させます。少しくどかった「悪人」よりこちらのほうが名作だとぼくは思います。

新潮文庫の100冊はかつてCD-ROM版で出ていたことがあります。米国滞在中に暇だったので読破しました。「孤高の人」もそこに収録されていたはずです。

そこには「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」が入っていったのですが2011年のラインナップでは「海辺のカフカ」に替わっています。「こころ」だって5回以上は読み返したと思います。

今年の100冊を全て買っても6万円くらいだそうです。全部読んだら気づかずにいた名作に出会ってその後の人生とは言わないけど少なくとも読書人生は変わると思います。たとえあなたが30歳を超えていたとしても。

新刊書を漁るのだけでなく「名作」をsimplyに片っ端から読んで見たらどうでしょうか。

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どの論文を読むべきか質問されます。

PubMedで適当に調べてその分野、分子、現象についての論文をまず積んだ高さで50cm分読んだらどうでしょうか。あえてスクリーニングをしない。それで基礎知識は得られます。

特に特定の誰かの総説を手っ取り早く読んでわかってしまうのは長い目で見たら本当は有害だと思います。総説と言うのはあれは書いている人が自分の頭の整理をするためにあるんですよ。

臨床修練でも教科書、論文をまず自分の背の高さくらいの分量を読んで見たらどうでしょうか。話はそれからですよ。
妙なハンドブックを一冊買っただけで済むはずが無いのです。
麻酔でもまず手術中患者のそばを離れず種々の進行に眼を配りながらメリハリをつけて緊張感を持続できてなんぼの世界です。何もできない癖にふらふらしていたのではどうしようも無いぜ。
学会などで誰かの講演を聞いてわかったようになるのも長い目で見ると有害だとぼくは思っています。

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