今日は朝から日当直です。24時間病院内にこもります。
6時頃登院して手術後のインタビューの準備をして一廻したところで緊急手術がさっきまでありました。二つめは故あって手術室の温度を高く保ったままでしたのでこっちも消耗しました。一緒に当直をしている先生方がしっかりしていて精神的にはかなり楽でした。
しかしすごい雨です。この雨でiPhoneが濡れて風前の灯となりかけている院生がいます。早く”四様”にしろという啓示と受け取るのが吉でしょう。

Scienceから高地順応の遺伝学についての論文が二報出ていました。
Genetic Evidence for High-Altitude Adaptation in Tibet
Science 2 July 2010: Vol. 329. no. 5987, pp. 72 – 75
Sequencing of 50 Human Exomes Reveals Adaptation to High Altitude
Science 2 July 2010: Vol. 329. no. 5987, pp. 75 – 78
HIF pathwayがここでも重要な役割を果たしているということが重要なメッセージなんでしょうね。
以前に紹介したことがある
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 107, 11459 (2010).
も合わせて読みたい論文です。こちらの方が示唆的だと思います。
これらの論文は別の読み方もできます。
チベットで暮らす高地順応が出来ている人たちはわずか3000年の間にすごいスピードで30以上の遺伝子への変異を蓄積してきたわけです。すごいスピードです。人類学的にはこちらの意味合いのほうが重要かもしれません。
高地順順応それも世代を超えたセレクションは単純ではないですね。まただからといって高山病が直るとか予防できるとかには繋がらんと思います。
を読みました。
タイトル通りの内容です。
冒頭晩年の黒澤明への辛辣な批判が書き連ねられすこしハラハラしましたが、内容には感服しました。
良い本です。昨今の岩波新書の中でも出色の出来だと思います。
冒頭を読んで最近読んだエッセイを思い出しました。
筑摩書房のPR雑誌「ちくま」に掲載された斎藤美奈子氏のエッセイ、
[世の中ラボ]4・「女性を描く」と強姦小説+妊娠小説になるのはなぜ?
です。
大江健三郎と村上春樹と最新作が俎上にあがり、めった切りにされるのです。片やノーベル賞作家、もう一人は現在もっともノーベル賞に近いと言われるいまや日本を代表する二人に作家の小説における「女性」の描き方がなっていないと斉藤氏は主張するのですが、確かにそうだねとあっさり同意してしまうほどの迫力。たしかに青豆が天吾とセックスしていないのに天吾の子を身ごもるなどありえないのです。
それはともかく、大江健三郎は高校生から彼がノーベル賞を受賞することまでぼくにとってはもっとも尊敬する作家でした。ー村上春樹氏はぼくが高校一年生の時分には作家としてデビューしていませんでしたー
高校生一年の時偶然に彼の短編小説「個人的な体験」を読まなければぼくの人生は全く別のものになっていたと断言できます。この小説を読んで、このまま田舎でぶらぶらしている訳にはいかないと漠然と考え勉強を真剣にするようになり結果として今の時分につながるわけです。
ー「同時代ゲーム
」や「万延元年のフットボ-ル」は今読み返しても良い小説と思いますが実は「個人的な体験」は今読み返すとどこに心を動かされたのかよく思い出せないのです。しかし、とにかく、これにより実存主義に目覚めたぼくはサルトルの著作を読むようになり「実存主義者」になったのです。今でもぼくは「実存主義」を信奉しています。ー
以来大江健三郎の小説・評論・エッセイは古本屋で買い求めたりして読破して北野ですが、ノーベル賞の受賞の前後、具体的には「治療塔惑星」位からまったくついていけなくなり「燃えあがる緑の木」の第一部「燃えあがる緑の木〈第1部〉「救い主」が殴られるまで」にいたっては通読を放棄してしまいました。以後彼の新作は読んでいません。
というようなことを思い出しました。
今日は論文の作業はもうしません。疲れた。
今日は職場は大忙しでした。ぼくひとりで3つ麻酔しましたし全部で結局12件処理したことになります。働きすぎだと思います。
さて久しぶりに低酸素の話です。
酸素分圧がある値を下回ると細胞で低酸素応答が始まります。
細胞の種類、応答の種類により反応性は異なります。
HIF-1の活性化についても酸素分圧が5%を下回る程度からHIF-1aタンパク質の細胞内蓄積が観察されさらに1%程度となれば転写活性化能が完全に活性化され転写因子としてフルに働くようになる。酸素分圧を横軸にとり縦軸にHIF-1の”活性”をとれば、反応曲線を描くことができる。細胞のおかれた環境や細胞そのものの状態によりこの反応曲線は相似ではあるが同一でないカーブを描くことは容易に想像できます。
HIF-1の活性化の制御に関わるタンパク質は多数同定されていてこれら分子の遺伝的な多型が応答にどのような影響を与えているかまた多数ある分子のうちのどの分子のどのような多型がどのようなタイプの応答にどのように関わっているかを知ることは低酸素応答の理解や医療への応用にほとんど必須のことであります。
Scienceに
Genetic Evidence for High-Altitude Adaptation in Tibet
Science DOI: 10.1126/science.1189406
という論文が発表されました。
高地チベット人と中国人、日本人の遺伝子の差をHapMap Projectの研究成果を用いて酸素利用に関わる遺伝子群に焦点を絞ってスクリーニングして10種類程度の遺伝子を選ぶことができたという報告です。ナイスです。うまくできすぎているとも感じますけど。
残った遺伝子は
EPAS1-HIF2aのこと
CYP2EE1
EDNRA-endothelin receptor type A
ANGPTL4-angiopoietin-like4
CAMK2D-calcium/calmodulin-dependent protein kinase II delta
EGLN1-PHD2
HMOX2-HO-2
CYP17A1
PPARA-peroxisome proliferator-activated receptor alpha
PTEN
このうち
EGLN1とPPARAはヘモグロビンの低値と特に強い相関があったそうだ。
それを狙っているのだが見事にHIFの周辺遺伝子で反応性の差の理由が落ちてきています。いやはや。
背景として
An Ethiopian pattern of human adaptation to high-altitude hypoxia
PNAS 2002 99 (26) 17215-17218
PNAS 2004 101 (39) 14300-14304
Higher blood flow and circulating NO products offset high-altitude hypoxia among Tibetans
PNAS 2007 104 (45) 17593-17598
などのDr. Beallの研究室からの論文を挙げておきます。
こんなのがあってこれが今回の論文の解析のきっかけになっているのだと思います。
nitric oxideも深く関わっていると思います。




