は米国National Institutes of Healthの director である Fransis S .Collins氏の”The Lanaguage of Life- DNA and the Revolution in Personalized Medicien”の邦訳である。日本語訳がすばらしいということを指摘しておきます。
目次は以下の通りです。
- 序章 もう、知らないではすまされない
- 1章 未来はとっくにはじまっている
- 2章 遺伝子のエラーがあなたに出るとき
- 3章 あなたの秘密を知るときがきた?
- 4章 癌はパーソナルな病気である
- 5章 人種と遺伝子
- 6章 感染症と遺伝子
- 7章 脳と遺伝子
- 8章 老化と遺伝子
- 9章 あなたの遺伝子にふさわしい薬をふさわしい量で
- 10章 一人ひとりが主役の未来へ
邦題よりオリジナルなタイトルの方が本書の特徴をよくあらわしています。
コリンズ氏は確かに本書でDNA and the Revolution in Personalized Medicienということを強調しています。
これは明らかに一般市民を対象にした本です。ゲノム研究の成果の解説というよりそれによりどう医療が変わってきたのか,また変わるべきなのか,について書かれています。各症の最期に簡単なまとめがついていて便利です。特に重要なサイトの htmlもついているので突っ込んで勉強したい一般人にはありがたいと思いますがもちろん英語のページに飛んでいきます。
遺伝子研究の成果から医学のあり方を説いていく形式で進んでいきますが,ぼくが驚き強調したいことはそのことではありません。
63ページに嚢胞性線維症の患者さんの生存期間の中央値のグラフが出ています。
1950年代には1年くらいだった生存期間が,1980年代には18年,そして2007年には37.4年まで延長しています。そしてコリンズ氏らが Science誌にCFTRの遺伝子変異を報告したのは1989年なのです。つまりどのような遺伝子変異であるかが明らかに遙か前から患者の診療・治療に関わる人たちの不断の努力で嚢胞性線維症の患者さんの生存期間は増加し続けていたのです。
これはいくら強調してもしすぎでないことだと思います。
この本の最期に私たちが取るべき行動がまとめられています
- 研究
- 電子カルテ
- 政策決定
- 教育
- 倫理問題の解決
米国でさえ医療費の5%程度しか医学研究費に使われていないし,NIHのグラントの採択率は20%以下だということだ。もっと増やせとNIHの長官として全く正当な主張です。
プライバシーだの何だといわず患者の情報をまとめる「電子カルテ」を整備しろ。これはぼくは賛成です。
日本で一番遅れている分野。
患者教育だけでなく医療関係者の教育も必要。医者であるあなたがこの本を読まなければいけない理由です。
いわずもがな。ちなみにコリンズ氏はガチのキリスト教徒です。(参照)
ちなみに遺伝性の多血症(polycythemia)は大きく分けると4タイプ存在します。
- erythropoietin受容体遺伝子(EPOR)の異常 (OMIM 133100)
- von Hippel Lindau遺伝子(VHL)の異常 (OMIM 263400)
- prolyl hydroxylase, PHD2 (EGLN1)の異常 (OMIM 609820)
- hypoxia-inducible factor 2a (EPAS1)の異常(OMIM 611783)
何種類かの変異が知られていて truncated formで持続活性化型変異も知られています。
Chuvash polycythemiaですね。
一種類の変異が知られています。
三カ所の変異が知られています。
これは四ヶ所の変異が知られています。肺高血圧症をともなうこともあります。
の4タイプです。
このうちChuvash polycythemiaは常染色体劣性遺伝の形式ですが他の三つは常染色体優性遺伝の形式を取ります。
ちなみにOMIMはOnline Mendelian Inheritance in Manのことです。データベースになっています。(参照)
ところでこれってすごいです。
Nature Materials (2011) doi:10.1038/nmat2971
今日は職場は大忙しでした。ぼくひとりで3つ麻酔しましたし全部で結局12件処理したことになります。働きすぎだと思います。
さて久しぶりに低酸素の話です。
酸素分圧がある値を下回ると細胞で低酸素応答が始まります。
細胞の種類、応答の種類により反応性は異なります。
HIF-1の活性化についても酸素分圧が5%を下回る程度からHIF-1aタンパク質の細胞内蓄積が観察されさらに1%程度となれば転写活性化能が完全に活性化され転写因子としてフルに働くようになる。酸素分圧を横軸にとり縦軸にHIF-1の”活性”をとれば、反応曲線を描くことができる。細胞のおかれた環境や細胞そのものの状態によりこの反応曲線は相似ではあるが同一でないカーブを描くことは容易に想像できます。
HIF-1の活性化の制御に関わるタンパク質は多数同定されていてこれら分子の遺伝的な多型が応答にどのような影響を与えているかまた多数ある分子のうちのどの分子のどのような多型がどのようなタイプの応答にどのように関わっているかを知ることは低酸素応答の理解や医療への応用にほとんど必須のことであります。
Scienceに
Genetic Evidence for High-Altitude Adaptation in Tibet
Science DOI: 10.1126/science.1189406
という論文が発表されました。
高地チベット人と中国人、日本人の遺伝子の差をHapMap Projectの研究成果を用いて酸素利用に関わる遺伝子群に焦点を絞ってスクリーニングして10種類程度の遺伝子を選ぶことができたという報告です。ナイスです。うまくできすぎているとも感じますけど。
残った遺伝子は
EPAS1-HIF2aのこと
CYP2EE1
EDNRA-endothelin receptor type A
ANGPTL4-angiopoietin-like4
CAMK2D-calcium/calmodulin-dependent protein kinase II delta
EGLN1-PHD2
HMOX2-HO-2
CYP17A1
PPARA-peroxisome proliferator-activated receptor alpha
PTEN
このうち
EGLN1とPPARAはヘモグロビンの低値と特に強い相関があったそうだ。
それを狙っているのだが見事にHIFの周辺遺伝子で反応性の差の理由が落ちてきています。いやはや。
背景として
An Ethiopian pattern of human adaptation to high-altitude hypoxia
PNAS 2002 99 (26) 17215-17218
PNAS 2004 101 (39) 14300-14304
Higher blood flow and circulating NO products offset high-altitude hypoxia among Tibetans
PNAS 2007 104 (45) 17593-17598
などのDr. Beallの研究室からの論文を挙げておきます。
こんなのがあってこれが今回の論文の解析のきっかけになっているのだと思います。
nitric oxideも深く関わっていると思います。
今日論文検索をして
Hypoxia application in athletes is not dopingというletterを見つけました。
どうやらEuropean Journal of Applied Physiologyに掲載された
European Journal of Applied Physiology, Volume 107, Number 4 / 2009年11月
この論文についてこの雑誌で議論が起こっていたようです。
この論文はラットを用いた動物実験です。ラットに組み替えヒトエリスロポイエチン(rHuEPO)を投与して投与後、20%酸素下と20%-12h/12%-12h環境下で飼育し、赤血球系のパラメーターを測定していくという実験です。
rHuEPOの投与20%-12h/12%-12h環境下で飼育するとドーピングを検出するためのさまざまなパラメーターが著しく修飾されドーピング検査がかく乱されるという結論つけています。
Intermittent hypoxic training: doping or what?
Of intermittent hypoxia and doping
Brain 2009 132(7):1866-1881; doi:10.1093/brain/awp102
これは本当にすごい!!
こういうセンスのいい研究をしたいものです。
実験思いついたけど秘密ですわ。




