“ゲノムと聖書:科学者、〈神〉について考える” (フランシス・コリンズ)
The Language of God: A Scientist Presents Evidence for Belief
J. Watsonの後を襲って米国のヒューマンゲノムプロジェクトを率いたFrancis Collins (参照)の著作の翻訳です。
科学者とくに生命科学者であることとキリスト教の信者(コリンズ氏は、only nominally Christianである両親に育てられ若いころはatheist-無神論者-であったが医学部で学ぶ過程で福音主義キリスト教徒となった)であることが両立するのかという問題が論じられます。
コリンズ氏のあまりに率直な書き方にひどく驚きましたが、ドーキンスの『神は妄想である-宗教との決別』やグールドの『神と科学は共存できるか?』よりは親密な感情を抱きながら読み進めることができました。
圧巻は第11章「真理の探求者たち」だと思います。よくここまで書いたなと感心します。原書の副題”A Scientist Presents Evidence for Belief”がこの章でいきています。<神>について考えるというよりやっぱり<信仰>について書かれているのだと思います。神を<信じる>ことと科学者であるということにどう整合性が着くかこれがこの本の主題だと思います。
解説書として読むのなら
第III部の
第7から第10章を読めばだいたい事足ります。だいたい以下の4つに分類できるということです。
- 無神論と不可知論
- 創造論
- インテリジェントデザイン
- バイオロゴス(参照)
コリンズ氏の立場は#4です。
有神論的進化論(Theistic Evolution, EV)でありかれがバイオロゴスと呼ぶ考え方です。名前はいかめしいですがそう複雑な概念ではありません。
ぼくには1と2の違いは如実だと思いますが、1と3,4の差は実はぼくにはピンときません。
翻訳も悪くないと思います。
Cellからです。
A Brief History of the Hypothesis
科学における”仮説”の歴史を概説したものです。
”論理実証主義”的な科学のとらえ方には古来多くの疑問が呈されてきたということの解説です。
ガリレオ、ベーコンと進んできてニュートンの”I frame no hypothesis”という言葉で代表される仮説の定立によらない帰納法的な方法論、ヒュームの懐疑論、ポパーの反証主義が解説され最後にラッセル、クーンの考え方が紹介されていきます。最後に反証主義が医学となじむかというような議論が行われています。
医学を”科学”だと考えて、医療の世界で反証主義を追及していったら療法を実際に患者に適応できなくなってしまいます。100%の完全な療法は存在せずある療法を施しても治癒できない疾患は存在します。例えばstatinが心血管系の疾病の発症を予防する作用を持つというclinical trialが成立したとしてもある特定の個人でstatinがまったく効かない場合が一例でもあればstatinの臨床使用が合理化されないとしたら製薬会社は成り立ちません。
このような場合、遺伝子を調べるとstatinの感受性を説明できる変化が見いだされそれによりstatinが効く人と効かない人を区別でき、特定の集団にだけstatinを使用すればいいということになりますがこれは一種のアドホックな仮説の援用とも言えます。悪く言えばその場しのぎの言い訳なのですがよく言えば、tailored medicineということになります。だからといっていろんな例外つまり反証は存在します。
このため医学は科学でなく芸術なのだという言い方をする人もあります。
多分このような問題は科学より大きな知識というような考え方を導入するする必要があると思います。
実はこの論文に書いてあるようなことは
“99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方” (竹内 薫)
ですべて解説されています。この本は話し言葉で記述されていて実際 iTune Storeでこの本の朗読版を購入することもできます。歩きながら本が”読めて”しまうわけです。
上記の論文の著者の一人David J. Glassの書いた本に
“Experimental Design for Biologists” (David J. Glass)
という本があります。結構おもしろい本です。




