今月中に投稿したい論文があっていろいろとやっていたら新しいエントリーから遠のいてしまいました。今週木曜日-といってもお勤めは水曜日からです-から土曜日まで学会でこの期間中は落ち着いて論文に取り組むことは不可能ですのですこし気合いをいれて作業を進めてきました。
何とかなりそうです。
今月は最終週にまた一週間ほど某コンファレンスがありこれまた論文を書くという雰囲気からはしばし遠のきますので来週と来来週が勝負ということになります。

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New York Timesに”Stone”というコラムがあります。

The Stone is a forum for contemporary philosophers on issues both timely and timeless.

という解説があります。

大きなくくりでは「臨床哲学」という分野となるのだと思います。
先週
Stone Links: Identity Check
というタイトルのエッセーがありました。

If your brain were transplanted into an organ donor’s brainless body, would you be getting a new body, or would you be losing a brain?

という問いかけから始まっています。

ちょっとベタな感じですよね。そう思って読み出したら結構面白かったです。

ぼくの恩師の一人に森健次郎 先生がいます(参照)。もう亡くなりました。
大学院を終わって麻酔科で助手-いまでいう助教でしょうか-をしている時代に結構いろんなことを話しました。
研究室に夜とか土曜・日曜日にいるとぼくの部屋に入ってきていろんなことを頼みもしないのに話してくるのです。
といういう訳で彼の若いときからその時分まので研究にぼくは大変詳しくなり教授退官最終講義-といってもホテルで行われたのですが-の内容で知らないことは無いくらいに詳しくなっていました。鶏はまだしもウナギの脳波を採ったことがあるとかウサギはストレスに弱いだとかいまでもいろんな事を覚えています。
脳死についても一家言有り-Miller’s Anesthesiaのbrain deathの項は森先生と関西医大の新宮先生と今は近畿大学にいらっしゃる中尾先生の共著となっています-いろんな話題を振ってくるのです。
まず手死・足死。石器時代には骨折しただけでエサを採る能力が低下して生き残れなっかたというのです。
どんどん時代が進み,腎不全になっても透析がある,肝不全になっても肝移植,心不全には心移植,呼吸不全には肺移植などが開発されてきているけど脳死で脳移植はないだろうということで脳死にたどり着くのです。
何度も同じ話を聞いていると一種の洗脳を受けたようになり森先生の視点がぼくの視点となってしまいました。

大学生の時に読んだ本で「中枢は末梢の奴隷―解剖学講義 (Lecture books)」というのがあります。養老 孟司さんが当時作家デビューしたばっかりの島田雅彦さんに「解剖学の講義をする」という形式で進む対談です。
タイトルがすばらしく今でもたまに読み返します。

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週末に「ほんとうの診断学: 「死因不明社会」を許さない (新潮選書)」を読み切りました。

正確な診断なくして、よき人生はない
正しい診断を知ること、それは「いのち」と向き合うことである。Ai(死亡時画像診断)を提唱して医学界の改革を図る著者が、「検査」と「診断」の本質を徹底究明。正しい医療を受けるために必要な知識を解説しながら、市民社会への視点を見失い不毛な議論に終始する昨今の日本の医学研究を解剖、その欠陥を抉り出す問題作。

と紹介されていたのでどんな本か読んで見たくなり立ち読みもせずにamazonで注文してしまいました。
とりあえず「最終回答」というのははったりです。

しかし一方,Aiは実はかなり浸透してきているのではないかと思っています。
森先生が亡くなった二週間ほど前にぼくの父がぽっくり亡くなりました。
農作業中に倒れそのまま蘇生できずに死亡宣告です。二時間ほど心臓マッサージが続けられていたそうなのですが一度も戻らなかったようです。
ぼくが直接先生に「もう結構です」というまで続けようと考えていたようです。結局本当の死因は解らなかったのですが,頼みもしないのに地元の病院の循環器の先生は死亡した父の頭から下腹までCT検査をしてそのfilmを弟に託してくれていたのです。後でぼくが何かねじ込むとでもお考えだったのでしょうか。
ぼくが見たところ脳の出血などはなく,ぼくの自力では異常を見つけられませんでした。filmを京都に持って来て放射線科の先生に読んでもらおうと思っていたのですがいざ頼もうとして結局はいまだに頼まず仕舞いです。何か怖くなってしまったのです。
というわけでぼくは死因はなんとしても明らかになる必要も無いしAiで全てが明らかになるとも思っていません。
でもAiで医学は確実に前進するだろうとは思っています。

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ハーバード白熱日本史教室 (新潮新書)
も電車の中で読みました。

医学部の講義は全て必修です。工夫をして受講者を集める努力をする必要はありませんが学生は出席するしないを自分で判断して面白くない講義であれば途中からでも退席する人もいます。(参照)

今年は内容は変えずにすこし工夫をしてみようかと思っています。

というわけで今日はお終いです。
学会で見かけたら声をかけてください。特に怖くはありません。

木曜日の夕方にすこし怪しい集会がありこれは楽しみにしています。いやー実際何話したらいいのか解りませんよね。

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今日がんばって某報告書の作成やgalley proofだのを全て処理してしまいました。
明日の当直なのですが何もできないと〆切に間に合わないからです。

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”Building a Better Physician — The Case for the New MCAT”

N Engl J Med 2012; 366:1265-1268

という文章を読みました。

米国では医学部,医学校に入学するためには4年制大学の学士号とMCAT(Medical College Admission Testに合格する事が求められるわけですが,このMCATを時代にマッチした「よりよい」医師を選択するために改革するという動きがありこの改革についての紹介がされています。
physical sciences, verbal reasoning, a writing sample,and biologic sciences中心の試験から
2015年からa section on behavioral and social sciences, and a section on critical analysis and reasoning will replace the writing sampleを含んだ試験になるのだそうです。

日本ではこのような変革の兆しはありません。しかし,ぼくは日本の制度はなかなかによい制度だと思っています。
医者になるためには医学校・医学部を卒業する必要があるわけですが,その選抜が単純に学力試験だからです。
高校の時のボランティア活動だとかクラブ活動まで評価に入れられていたらぼくなどとうてい医学部への合格はおぼつかなかったはずです。ぼくはクラブ活動など好きでもなく趣味と言えば読書くらいでそれで大学に合格しただけの人間です。学力だけの試験だったからこそ医学部に入れて医者になれたのです。

どんな試験を行っても医者に不適切な人間はある一定頻度で存在してその頻度は試験によらないのではないかとぼくは考えています。
また人格を総合的に評価するような試験が可能だとしてそれに落ちたとしたらそれこそ人格を否定されたような気分になるじゃないですか。今の試験は「タダの」学力試験だからこそ落ちた人も浮かぶ瀬があるのだとぼくは思っています。

だからといって試験を難しくしろと主張しているわけではありません。ある程度は学力試験で絞り込んで最後はくじ引きというのはぼくはアリだと思います。また途中から参入する人がしやすい様な仕組みを作ることも重要だと思います。

NHKのドキュメンタリー「輝く女」<新>で北川景子さんが取り上げられていました。北川さんは医者を目指して受験勉強をしていた時があったそうです。なんであきらめてしまったのでしょうか。残念です。
この番組をぼくが観ていたら家内が横からああだこうだといってきてホントうるさかったです。いい歳して,いい加減にしてもらいたいものです。

某報告書やproofの処理の他に大量の書類も処理しました。このような雑用をいままで「文化的な雪かき」という風に思ってきましたがこれからは「雑巾がけ」と呼ぶことにします。ぼくがやっていることの6割はまさに「雑巾がけ」です。これは何かの修行なのだと思います。(「雑巾がけ: 小沢一郎という試練」)

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今日の夕方一瞬出て消えたニュースがありました (参照)。後30分ほどで解禁です。
京大のキャリアパスの原田さんのお仕事がまとまったのです。
研究をやっている間は原田さんについていこうと決めました。

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New York TimesにCarl Zimmerが昨今増えている論文のretractについてのessayを書いています。

A Sharp Rise in Retractions Prompts Calls for Reform

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実質的には昨日4/2から新年度スタートです。研修医の先生方のオリエンテーションが3日感続くと言うことで手術室では症例制限がかかっていて16:30にはすべての手術が終わりました。その後科内の某重要会議が終わりこんな当直もあるのだとすっきりした気持ちで過ごしていたところ21:00頃当直PHSにコールが。ただの事務連絡でした。

安心しきっていたところ0:00を超えた頃,緊急手術の申し込みが舞いこみまったくもっていつもの月曜日の当直の様になってしまいました。
京大病院初日のS登先生と麻酔を担当して結局寝たのが4:30位で睡眠時間2:30位で火曜日に突入となりました。

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ご無沙汰していました。調べてみると3/23以来のエントリーです。
某原稿に取りかかっていました。
今回は結構勉強しました。論文は100篇以上読み込んだと思いますー普段論文を書くときはこんなに読みませんしメモを取ったりはしません。
ボールペンを持って線を引いたり○をつけたりしながら読む,必要に応じてメモを取り皿に付箋紙に書き取りその後の活用に備えるというオーソドックスなスタイルで読みそれに基づき内容を構築していくのです。
ぼくに振られたお題ははじめぼくには不適切と考えました。出版社の担当の方に連絡を取り,編集担当先生のお考えを確かめていただきその上で執筆を受諾しました。何かの「間違え」でぼくに振られた仕事をそのまま受けて「コケる」ことは避けたいと思いました。
結果としてすごく勉強になりました。この路線で実験もいくつか考えつきました。
今日原稿を出版社にsubmitして一段落です。
とにかく,こういったいわゆる「勉強」は久しぶりでした。

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島岡さんのtweetがきっかけで本を一冊読みました。
“Quiet: The Power of Introverts in a World That Can’t Stop Talking”
です。

著者はSusan Cainさん
米国では今年の1月に出版されNew York Timesのベストセラーにもランクインした(今週はnonfiction部門で8位9週連続10以内をキープしています,Steve Jobsは5位でTHINKING, FAST AND SLOWは10位です)
Introvertsというのは「内向的な人」のことです。
人間を無理矢理分類すると約3割はIntrovertsと分類されるのだそうです。このような人々は米国では一般的には否定的に評価されるということがあるのですが,このような人たちの内向性をポジティブに評価していくというのか本書です。
内向的な人たちは物事を慎重に観察して,直ぐに判断してしまうのでなく深く考えることを優先して最終的には優れた結論を出す。また仕事に集中して自己啓発の能力が高いというのです。
例えばマイクロソフトのビル・ゲイツ誌などは本来的な内向的な性格を克服して大企業の指導者として成功したという例として語られます。

ぼくらは麻酔科医の医者なので外来に毎日出るわけでなく一緒に働いていて内向的であるという理由でネガティブな評価を下されることは無いと思います。
毎日同じ手術室で働いて諸事への判断を視ていればその人の能力を見誤ると言うことはほとんど無いと思います。
べらべらよくしゃべる医者にこそ要注意です。
研究室ではなおさらです。対象をしっかりと観察して適切な判断を下せるかどうかは外向的な性格であるかどうかとは関係は無いと思います。大学院生とも長いつきあいなので正確の内向性故にどうこうということはありません。
麻酔でも研究でも言い訳を「上手にする人」ほど手に余るものはありません。

“Quiet: The Power of Introverts in a World That Can’t Stop Talking”
はもちろんKindleでボタン一発($12.99)です。
たぶん翻訳されると思います。

著者Caine氏のTEDでのプレゼンテーションが視聴できます。(参照)

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今まで10日ほどぼくへmailなど送ったのに反応がいまいちとお考えの皆さん,済みませんでした。明日からばりばり片づけます。

今日の嵐すごかったですね。阪急梅田駅も大混乱だったようです。(参照

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4月から所属が書類上すこし変わりました。外部の人にはほとんど関係ないと思います。ぼくがすこし忙しくなっただけです。
年間1万症例くらいの手術をうまく捌くスキルが身につけばどこの病院に移っても大丈夫だと思って少し真剣に取り組んで見ようと思います。

最後に本の紹介です.
門川さんの「研究留学術 第2版―研究者のためのアメリカ留学ガイド」が第二版となって出版されました。改訂でもすこしお手伝いしました。(参照

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