学会でしばらく更新が途絶えていました。今日の日当直でまた日常生活へ回帰することになりました。

知の旅への誘い
知の旅へー食べもの、味分けるということ
の続きです。

味分けるとか見分けるといえばニセ物とホン物の区別と言う事になります。

またまた小林秀雄の登場ですが、科学者たるもの小林秀雄の”真贋”と”骨董”は読んでおく必要があると思います。

狐がついて」骨董の世界に足を踏み入れた小林秀雄の告白というかそんな小文ですがこれがおもしろい。

こんなことは研究にどっぷり使っている人にはよくわかっているのだが妙に理想的な印象をいだいているだけの人には分からないことの一つに例えば論文にニセ物とかホン物とかの区別はなかなかつけられないということがある。
捏造だといわれてもなお最後まで真相など分からない。裁判になれば明確な証拠がなければ捏造もなかったことになる。

偉い人がいうのでホン物だとか、ぼくみたいなチンピラがいうのでニセ物くさいというようなこともある。
しかし、実験を実際に自分の手でおこなったヒトにとっては実験事実は事実であり自分の発見は、価値があろうがなかろうがホン物なのだという信念はあるのである。

しかし、この世界、ホン物であろうがイケてないものはあるのでありイケてないものばかり世の中に送り出しているだけではどうしようもないということになる。

ここら辺の事情がわかるようになれば「小僧さん」から「番頭さん」に昇格できっかけがあれば「暖簾分け」してもらいえるということになる。
自分の店を構えればどんなに店が小さくとも、作品つまり論文に兎や角直接言ってくれるヒトはめっきり減って後は陰口を叩かれるだけになりその果てに朽ちて行くヒトも出てくる。

まあこんなことが骨董品の世界に仮託して書いてあるわけです。

「骨董」「真贋」はモオツァルト・無常という事 (新潮文庫)に入っています。たったの500円。

よくプレゼンテーションが大切とか言いますけどぼくはあんまり信じていません。

「箱や極めのないニセ物なぞないのである」と小林秀雄も言っています。

知の旅への誘いではブリア=サヴァランが「美味礼讃」で「どんなものを食べているか言ってみたまえ。君がどんな人間であるかを言いあててみせよう」という言葉が紹介されている。
NANAにナナがバンドに参加してきた真一に「リスペクトしてるギタリストは?」と尋ねるシーンがあって、本質的には同じだろう。

例えばリスペクトする生物学者を3人上げろといわれたらどう答えるだろうか?

フランシス・クリック
梅園和彦

と一応

グレッグ・セメンザ

ということにしておきますがこの質問であなたがどんなヒトか当てることは可能だ。

本当なもう一人いるのだかが名前を書き込んだだけでぼくのiMacがぶっとんだら困るのであえて書きません。
ハリー・ポッターでヴォルデモートが”He who must not be named“と呼ばれているようなものですね。

モオツァルト・無常という事 (新潮文庫)

先週のNatureに

HIF-1 antagonizes p53-mediated apoptosis through a secreted neuronal tyrosinase

Nature 465, 577–583 (03 June 2010) doi:10.1038/nature09141

が出ていました。線虫において低酸素誘導性のリモートプレコンディショニングにHIF-1が関わっているいるという報告です。皆が追試するだろうな。
ぼくの部屋でもやってみようと思います。戦略はもう立ちました。あとは誰が実験するかですね。

 

知の旅への誘い (岩波新書 黄版 153)

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