今晩は当直です。朝まで確実と思っていた某手術がすんなりと1時前には終わってしまいました。
大学院生のD条先生の学位審査のための講演会が水曜日の朝に開かれました。
審査員以外のギャラリーが教授とぼくを除いて7人いるという賑やかな会になりました。
火曜日の夜に最終の予行演習をしたのですがす「ぴりっと」した感じに乏しく,私たちの医学研究科のone of 御大sであるN宮さんを迎え撃つにはスタミナ不足の感がぬぐえない状態でした。
朝になり他の審査員の先生方がそろわれているなか,N宮さんは予定開始時刻にぎりぎりに現れるという宮本武蔵的な戦術をのっけから繰り出し緊張感がどっと高まったところで講演会が始まりました。
昨日の予演会の段階では自分で墓穴掘ってどうするんだ的なポイントが散見されたのですが本番ではそこら辺にかなりの改善の跡が認められました。そのかいあってか,N宮さんも途中からジャブのような質問を繰り出す戦略は採らずにプレゼンテーションは最後のスライドまで無難に進んでいきました。
しかし,質疑の時間の口火を切ったのはやはりN宮さんでした。
今回の学位審査のネタとなったこの論文は,素人がちょっと読むと細胞株を用いてfentanylのHIF-1活性への影響を見ただけと思ってしまうのですが実はそうではありません。HIF-1やGPCRのシグナルとある程度知っている人なら一読して一種の「違和感」を感じるはずの結果が記述されています。つまりfentanylがµ-opioid receptorから細胞へシグナルを入れているという常識的なコンセンサスにそった仮説からはずいぶんとはずれた現象を報告しているのです。
N宮さんははじめからここの齟齬を議論の対象とした質問を繰り出してこられました。さすがです。
しかし,この現象の分子機序をこの論文では解析し尽くしたわけではないのでその質問には明確な「答え」は存在しません。それ故,講演者の見解を問うような質問となっていたのです。提示されたデータを元にいろんな仮説が述べられそれの妥当性を議論して行くような学位の講演らしかなぬ展開になっていったのです。
これは喜ぶべき事だと思いました。あのように議論が展開されたということは,少なくとも論文で提示した現象に対して審査員が一定以上の興味を抱いてもっと深く知りたいという気持ちを持っている証拠だと思うからです。findingsの面白みを大切にしてもらったとも言えます。某学会の発行する英文雑誌のreviewerはこういう態度を見習うべきだと思います。
というわけで審査会は終了しました。
審査員の議論に対して批判的な受け答えがもう少し積極的にできればよかったとは思いましたがあの状況で自在の受け答えができたらそれはそれで怪物的だとおもいますので仕方なかったかも知れません。
昨晩の予演会での危惧が杞憂に終わりぼくとしては満足でした。
昨日は24時間手術室の当番でした。
緊急手術などの御用聞きです。外科医や看護師さんとのインターフェースになって決まれば担当の麻酔科医を手配することが主な仕事です。その間,研修医君をつけてもらって予定の麻酔は進行しています。
月曜日とか金曜日は緊急手術が多めなのですが昨日は7つもありました。閉口します。
終わったと思うと次の電話がかかってくる感じは悪夢以外の何ものでもありません。一日で40回くらい掛かってくることもあります。
午前一時くらいにはホントにしんどくて座っているのもやっとという感じでこれはやばいなと思っていると手術が終わりました。
New York Timesに航空機への搭乗時間についての記事がありました。(Cattle Calls Sluggish at Gates, So Airlines Try to Pick Up)
現在だと国内線で140人ほどの乗客の乗り込みが終わるまでに30−40分ほど時間が掛かるとのこと。これが1970年代には15分くらいで終わっていたのだそうです。
またどうやって乗客を機内に案内するかについての論考も付いていてこれはネタには最高です。
A New Variation in Boarding an Airplane
”1Q84”読了です。
”Steve Jobs”に掛かろうと思います。でも英語で読むことはないなと反省しています。
ということで東大の院生が新潟県の某町の町会議員選挙で当選したというニュースです。
ということで食い詰めそうになったらぼくも選挙にでも出てみようかなと…
公務員は公職選挙法が適応される選挙に出るとそのまま失職だそうですが国立大学法人はどうなんだろう。調べておこうっと。
昨日の当直は応えました。
朝からだらだら緊急手術が5つくらい入り3時過ぎに終わって横になると一時間ほどでPHSで起こされそのまま8時45分まで帝王切開でした
こんな感じの帝王切開は,看護師,産科医,同僚麻酔科医との連携する力,技術力を含めた麻酔力が試される場の一つですね。いまだにすごく緊張します。
明け方でここで当直をしている先生方を起こすと翌日の麻酔に差し支えると思ったのですが,この未明の時間にぼくが粗相でもしたらと重いS原先生にも手伝っていただきました。今朝はぼくが挿管しました。
救急隊が手術室まで患者さんを運んでの帝王切開はそうそう経験しません。切り抜けて患者さんを送り出して,午前中はふぬけみたいになっていました。
Oxygen Sensing, Homeostasis, and Disease
Gregg L. Semenza博士による総説です。cDNA cloningから16年でNEJMの総説です。結構感慨深いです。
疾患・病態を分類して酸素代謝から説明して記述していくプロジェクトを計画しています。一年くらいで何とか完成させたいと思います。
さて島岡先生のセミナーが近づいています。ふるってご参加ください !!
今週の金曜日です。
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京都大学医学研究科大学院共通教育コース
『キャリアアップセミナー』
日時:平成23年8月26日 金曜日 17:00-18:00
場所:医学部基礎講堂1
講師:島岡 要
三重大学大学院医学系研究科・分子病態学講座 教授
講演タイトル:「医師・研究者のキャリアについて語ろう」
島岡先生は大阪大学病院,大阪府立成人病センターで10年余り麻酔科医として勤務後, ボストンへ研究留学し、ハーバード大学医学部・准教授としてラボ運営に奮闘されました。 2011年に帰国。 臨床麻酔のできる”基礎医学研究者”を自称されています。 専門は免疫学・細胞接着。 また研究者のキャリアやスキルに関する著書に「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」「ハーバードでも通用した研究者の英語術」(羊土社)があります。雑誌「実験医学」の連載をまとめた「プロフェッショナル根性・研究者の仕事術」などは若手研究者の間でのmust-readの文献となっております。先生の講演はキャリアプランニング,研究へのモチベーションなどの観点から大学院生を中心とした若手研究者に多くの示唆を与えてくれるはずです。
皆様 奮ってご参加下さい。
世話人:侵襲反応制御医学講座・麻酔科学分野 広田喜一
皮膚生命科学教室 椛島健治
主催:大学院教育コース
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不可能性の時代読み返しました。