明後日5/23から札幌市で日本麻酔科学会 第60回学術集会が三日間の予定で開催されます。
初日に出番がある以外は余裕のある日程です。
まず「会長企画」の
A01:PONVを考える (2013/5/23(木)08:30~10:30 第04会場)
に参加します。 初日の朝一番です。イヤな予感がします。
午後からは
Q02:神経 優秀演題1 (2013/5/23(木)13:30~15:00 第11会場)
の審査員です。
演題は以下の通りです。
[Q02-1]臨床濃度のプレガバリン・ガバペンチンは糖尿病性神経障害性痛動物モデルにおいて、一次求心性終末からのグルタミン酸の放出を抑制しない。 GABApentinoids don’t affect glutamate release from primary afferent terminals in diabetic neuropathic pain model rats
馬場洋 先生 (新潟大学大学院医歯学総合研究科 麻酔科学分野)
[Q02-2]末梢神経損傷マウスにおける脊髄後角内の興奮性シナプス伝達に対するプレガバリンの効果 Inhibitory effect of pregabalin on excitatory synaptic transmission in the spinal dorsal horn of neuropathic mice
松澤理恵 先生 (獨協医科大学病院 麻酔科学教室)
[Q02-3]扁桃体機能は海馬における全身麻酔薬作用を修飾する ー扁桃体/海馬複合体スライスを用いた検討ー Amygdala function modulates general anesthetic actions in hippocampus: Electrophysiological studies in amygdalohippocampal slices
佐々木利佳 先生 (富山大学附属病院 麻酔科)
[Q02-5]Syntaxin 1Aノックアウトマウスにおけるセボフルランの脊髄後角興奮性シナプス伝達に対する作用の減弱 Effects of sevoflurane on spinal excitatory synaptic transmission in syntaxin 1A knockout mice.
國分伸一 先生(獨協医科大学 麻酔科学講座)
[Q02-6]セボフルランによるマウス視交叉上核の時計遺伝子mPer2発現抑制に関するエピジェネティック解析 The epigenetic mechanism of repressing the expression of clock gene Per2 by sevoflurane in the suprachiasmatic nucleus of mice
森啓介 先生 (日本医科大学 大学院医学研究科 疼痛制御麻酔科学分野)
これは最優秀演題を決めるコンテストです。嫌らしい質問を浴びせていこうと思っています。
いま気づいたのですが[Q02-4]ってどうなったのでしょうか?
その他今回ぼくの関連する演題は
[P1-11-6]膵β細胞MIN6の静脈麻酔薬のインスリン分泌に対する影響の検討 The effect of intravenous anesthetics on insulin secretion in pancreas beta cell MIN6.
鈴木堅悟1,広田喜一1,大条紘樹1,甲斐慎一1,松山智紀1,福田和彦1(1.京都大学大学院 医学研究科侵襲反応制御医学講座麻酔科)
鈴木さんは仙台に戻られました。
[PD1-17-5]婦人科短期滞在手術におけるデスフルラン麻酔後の悪心嘔吐に関する検討 Comparison of the effect of Desflurane and Propofol on post operative nausea and vomiting in ambulatory gynecological surgery.
澤登慶治1,佐藤雅美1,広田喜一1,福田和彦1(1.京都大学医学部附属病院 麻酔科)
澤登先生は香川に戻られました。
Q11:救急ICU 優秀演題(基礎)2013/5/24(金)13:45~15:00 第11会場
[Q11-1]麻酔薬は敗血症時の視床下部における炎症性サイトカイン誘導を抑制する General anesthetics suppress sepsis-induced up-regulation of inflammatory cytokines in mice hypothalamus
田中具治1,広田喜一1,甲斐慎一1,松山智紀1,福田和彦1 (1.京都大学医学部附属病院 麻酔科)
Q10:ペイン緩和・局所麻酔 優秀演題(基礎)2013/5/24(金)13:45~15:15 第10会場
[Q10-2]神経因性疼痛モデルラット脊髄における低酸素誘導性因子とその下流遺伝子の発現について Expression of hypoxia-inducible factor 1 and its downstream genes in the spinal cord of rat spinal nerve-ligation model
松山智紀1,佐々木美佳2,天谷文昌3,広田喜一1,福田和彦1(1.京都大学医学部附属病院 麻酔科,2.京都府立医科大学麻酔科,3.京都第一赤十字病院麻酔科)
というわけで田中先生と松山先生も最優秀を目指して登壇します。
お知らせ
ブログを新しいドメインに移行していきます。
新しい場所は
です。
一見にどこが違うんだと言うくらい外見は似ていると思います。エントリーも移行しました。この作業に日曜日2時間も費やしました。
9月中は現行のブログも同時更新していきますし,少なくとも一年間は現行のブログの手入れはおこなおうと思っています。
日当直です。
朝から待機していますがいままで出番がありません。
結構はかどり今日中にならなくてはいけないこと,やりたいと思っていた事ができました。
学会でのプレゼンテーション
土曜日にある学会に出席しました。全国レベルの学会ではなく参加者はある学会の関西地区の人たちです。それでも5つの部屋に分かれて朝から講演,口演発表,ポスター発表などが行われる結構大きな規模の学会です。
いくつかの講演を聴いていて学会でのプレゼンテーションについて考えました。
口演発表,ポスター発表共に演者の人は5−7分のプレゼンテーションを行いその後,質疑応答を受け付ける形式でした。口演の人はPC上のプレゼンテーションソフトを使い,ポスターの人は目の前のポスターに沿った発表となります。主に若い人たちが演者で予行演習の成果もあり皆さんすくなくともプレゼンテーションの部分はすごく巧く話していたと思います。この意味では20年前のぼくらよりはるかに立派な発表者であると思います。
何人かの人の1時間程度の講演がありました。 内容は置いておくとしてプレゼンテーションの技法をもう少し意識した講演であれば内容がもっと引き立ったと感じました。
ぼくが参考にしている発表の方法についての参考書は,諏訪邦夫先生の 「発表の技法―計画の立て方からパソコン利用法まで (ブルーバックス)」です。1995年に出版されたブルーバックスですがまったく今日的です。 この本の第二章と第三章の内容を自分なりに吟味する事をお勧めします。
この本は各章のお終い部分に発表のマーフィーの法則という付録が付いています。 例えば
- 発表を練習する余裕のなかたっとき,発表は失敗する
- 聴衆は教育されることを嫌う
- 他人の論文の解説は退屈である
- 質問で立ち往生したら,発表がよかったのである
- 美しいスライドを使えば,くだらない研究も素晴らしくなると考える人は愚かである
などなどです。
「医療者のための伝わるプレゼンテーション (JJNスペシャル)」も参考になります。これはたぶん看護師さんを想定して書かれた本ですが医者が参考にしても全く問題ありません。 STEP4 Delivery いよいよ本番 の章は一読をお勧めします。 またポインタの使い方は気をつけてもらいたいと思います。 ポインタをスクリーンで意味も無く動かされると少なくともぼくはイライラしてきてそれ以上その発表を聞きたくなくなります。日本ではよほど偉い先生方もこれをされる人が多いと感じます。止めてくださいというよりポインタなど使わなくともよいようにする工夫できるはずです。
予行演習をしっかり行えば時間管理も成功するというより失敗しません。口に出して話すことにより言いにくい言葉を他の同じ意味の自分にとって言いやすい言葉に変えたりもできます。予行演習は重要です。 講演の朝蒲団の中でスライドを頭の中で繰りながら声に出して講演を空でできれば原稿も何も無しで話すことが可能です。
また1時間をいっぱいいっぱい使うのは困ります。1時間の講演なら45分で話し終わり残りの15分は質疑応答にあててください。わざわざ会場に運んでくれた聴衆でどれだけ内容が伝わったかはどれだけ質問がでるかである程度推定できます。
ある医師の麻酔科学会退会
日本麻酔科学会に所属していた医師が論文発表において不正行為を行ったと麻酔科学会が認定した件については以前にも書きました。(参照)
この医師の処分について,最近日本麻酔科学会の理事会が声明を出しました。(元会員藤井善隆氏の論文捏造に関する理事会声明)
つまりその会員は学会へ退会届を出したのでそれを受理したということです。
声明の内容に少し疑問を感じました。
この結果,藤井善隆氏は退会いたしましたが,本学会としては,本邦の麻酔科医および研究者全般の信用を多大に失墜させ,国民への安全な医療提供にも多くの悪影響を与えた同氏には,医師,研究者としての資格はないと判断し,永久に本学会への再入会を認めないことと致しました。関連諸団体,施設におかれましても,このような案件を二度と繰り返さないためにも,藤井氏の今後の活動に対してはご留意をしていただくよう,これら事実を公表して,強く要請を致す次第です.
とありますが,
- 永久に再入会を認めないことなどできるのか?
- 藤井氏は医師としての資格がないような人なのかどうか?
この二点です。
学会の規約を読むと
会員は,理事会の審議を経て定める退会届に理由を付して提出し,任意に退会することができる
とありますのでこれに沿って出された退会届を受理したといことは解ります。退会の主導権は会員にあるのです。
一方入会は,
理事会は入会の可否を審議し,合理的 な理由のない限り入会を承認し,これをもって入会日と定め申込者に通知する. とあり理事会の承認が必要です。理事会は永久にもし入会届が出されてもこれを認めないと言っているのですがこれは可能なのでしょうか。現執行部はいつまでも麻酔科学会の運営を続けるわけではありません。少なくともこの意思表示はその当時の麻酔科学会の総意で行うべきだとぼくは思います。
また怖いのは
関連諸団体,施設におかれましても,このような案件を二度と繰り返さないためにも,藤井氏の今後の活動に対してはご留意をしていただくよう,これら事実を公表して,強く要請を致す次第です.
の部分です。「留意」ってなんでしょうか? まるで藤井氏は医者の資格がないような人物なので医師としての活動をみんなで阻止しようと呼びかけているかのようです。
また毎日新聞の見出しが「元准教授が麻酔学会退会 除名処分、不可能に」となっていました。ここは麻酔科学会退会とすべきだと抗議すべきと思います。タダでさえ自分たちは麻酔科医(anesthesiologist)であって麻酔医(anesthetist)ではないと主張したい人が集まっている学会ですから。
朝出発の時はすでに雨は上がっていました。
立場上今日も学会参加です。
第五会場に居座って講演中心でいきました。
まず中枢神経における水チャネル<アクアポリン>の機能
名市大の祖父江先生の講演でした。
ぼくらも低酸素環境下でのAQP4の発現について調べていました。臨床的現象との関連のデータがないのでお蔵入りとしていましたが発掘して足りなければ足して論文にしようと思いました。いまならいけるだろうという見込みです。
次は小森 万希子先生(東京女子医科大学東医療センター)の
ショックと微小循環
です。
特別な実験系を用いた研究です。項目を少し絞って突っ込んで掘り下げていただくともっと為になったと思います。
酸素の需給をリアルタイムでアッセイできる実験系と融合できれば最高の知見を提供できると思いますというかそういった知見を期待していました。
講演の前に@KatoYoppy と話すことができました。元気です。今回もフル活動のようです。
お昼のセミナーは阪大の柴田 晶カール先生の
TAPブロックの実際:臨床経験と今後の展望
に参加しました。
超満員と言うより部屋に入れなかった人がたくさんいました。今日のラインナップを考えればこのセミナーが一番人を集めることは十分予想できたと思いますが…
セミナーはとてもよかったです。詰め込みせず手技の具体的な側面にこだわらずバランスがよいセミナーだったと思います。柴田先生は声がよく,しかも急ぎせずに話していたのがよかったのだと思います。
講演は,他人がやったこと,他人がやった事を自分でもやってみたということ,さらに自分で新たに見いだしたことが解るように話してもらわないとどう質問して良いのか解らなくなります。またテーマと関係のない冗談を繰り出されても戸惑うだけですし,区切り無く蕩々と話されてもこれまた講演後に残る部分が少なくなります。
その他の雑感は明日以降とします。
< 追記>
医科歯科大学の中山さんや慶応大学の南嶋さんらが尽力してくれて低酸素関連のシンポジウムが12月の福岡での生化学会で採択されました。この分野は重要だし,若い皆さんの将来性が評価されたのだと思います。おめでとうございました。